SNS型投資詐欺の手口と対策|有名人の偽広告・LINE誘導に注意

SNS型投資詐欺の入り口は、怪しいアカウントから届くDMではありません。約4割が「広告」です。この記事を読めば、なぜ広告が入り口になってしまうのか、国が何を要請したのか、そして今日から自分と家族を守るための具体的な4つのルールが分かります。

「自分は詐欺なんかには引っかからない」
「怪しいDMは無視すればいいだけでしょう」
そう考えている方こそ、いま最も狙われています。子どもには「知らない人とつながってはいけない」と教えている大人が、広告から投資グループへ誘導されて被害に遭う、という構図が現実に起きています。

この記事では、警察庁が公表している被害の数字と、2026年8月7日に7つの府省庁がSNS大手5社に出した要請の中身を整理します。手口の入り口が変わったことを知るだけで、防げる範囲はかなり広がります。

意外なのは、DMに対しては警戒心を持てる人が、広告に対してはほとんど警戒心を持てていないことです。理由は単純で、広告は「審査を通っているように見える」からです。実際には、その本人確認がほとんどされていませんでした。

私は全国の学校・企業でSNS・デジタルリテラシーの講演を行っています。その立場から、「SNSは危ないから使うな」ではなく、「手口の入り口が変わったことを知って、そこをしっかりと塞ぐ」という考え方をお伝えします。


目次

まず被害の規模を数字で確認する

2025年のSNS型投資詐欺の認知件数は9,523件。前年比で48.5%の増加です。被害額は1,288億円で、前年比47.9%の増加。1年で約1.5倍に膨らんでいます。

しかもこれは警察が認知した数だけです。届け出ていない人を含めれば、実際はもっと多いと考えるべきでしょう。

入り口の約4割は「広告」

この9,523件のうち、広告が入り口だったものが3,785件。約40%です。特にYouTube経由は、前の年の約20倍に増えたと報じられています。

つまり、「知らない人からDMが来る」という従来のイメージは、すでに実態とずれています。普通にInstagramやYouTubeを見ているときに勝手に流れてくる広告をタップしたところから始まっているのです。

「子どもに教えている大人」がいちばん狙われている

私がこの数字を見て思ったのは、ここです。

「知らない人とつながってはいけない」「怪しいDMは無視しなさい」と子どもに教えなければならない立場の大人が、自分は広告から投資グループに誘導されてお金を送ってしまっている。「子どもにはSNSを禁止すべきだ」と言っている大人が、実際には被害に遭っている。

DMは怪しい、という警戒心は持てても、広告は怪しい、という警戒心はほとんどの人が持てていません。だからこそ、そこを狙われているのです。

7府省庁がSNS大手5社に出した要請の中身

2026年8月7日、警察庁・金融庁・消費者庁・デジタル庁・総務省・法務省・経済産業省の7府省庁が、Google・LINEヤフー・Meta・TikTok・Xの5社に要請を出しました。取りまとめはデジタル庁です。

内容は3つです。

1. 広告主の本人確認

個人ならマイナンバーカード、法人なら商業登記の電子証明書で、誰が出している広告なのかを確認し、追跡できるようにすること。

2. 透明性の表示

広告主の名前と所在地、本人確認をしているかどうか、生成AIを使っているかどうか、そしてなぜこの広告があなたに表示されているのかを表示すること。

3. 削除要請への迅速な対応

公的な窓口や監督省庁から「これは詐欺です」と指摘されたら、すぐに消すこと。

各社は10月16日までに対応方針を、翌年3月16日までに実績を報告することになっています。

7つの府省庁が名前を並べる、ということ

私はもともと霞が関で働いていたので、7つの府省庁が名前を並べて1つの要請を出すことがどれだけ珍しいか、感覚として分かります。

普段は縦割りだと言われる役所が揃って動くということは、それだけこの問題が深刻だということです。

ただし注意点があります。対応方針の報告期限が10月16日、実績の報告が翌年3月16日ですから、今すぐ状況が改善するわけではありません。引き続き、広告には警戒してください。

なぜ広告が詐欺の入り口になってしまうのか

私なりに整理すると、理由は3つです。

1. 広告は「審査を通っているように見える」

DMは誰でも送れます。アカウントをぱっと作ればいいだけです。

でも広告は、お金を払ってプラットフォームに出してもらっているのだから、ちゃんとした会社なのだろう、と思ってしまう人が多いのです。

実際には、広告主の本人確認はほとんどされていませんでした。だから今回、マイナンバーカードで本人確認をしろという要請が出たわけです。逆に言えば、今までは誰が出しているのか分からない広告が、あたかもお墨付きがついているかのように流れていたということです。

2. 有名な投資家や経営者の顔と名前が使われていた

テレビでよく見る人の顔写真と名前を使って、「私が教えます」という広告が出ていました。しかも本人はまったく関係ありません。

使われた本人が声を上げたこともありましたが、それでも効果はなく、AIで作られた動画が広告として流され続けました。

いまのAI生成動画は本当に自然で、本人が喋っているように見えます。今回の要請に「AIを使った広告はその旨を表示しろ」という項目が入ったのは、ここが理由だろうと考えています。

3. 広告からLINEグループへ誘導される

広告をタップすると、「無料で投資を学べる」というLINEグループに飛びます。そこには先生役と生徒役がいて、みんなが儲かっている話をしています。

でも、その生徒も仕込みです。儲かっていないのに儲かっている風を装う役がいるのです。

ここまで来ると、もう広告の話ではなく、信頼関係を作られている状態です。だから入り口は広告でも、出口では「知り合いにお金を送っている」感覚になってしまう。ここが怖いところです。

今日からできる4つの守り方

1. 広告から投資に入らない、と決める

これをルールにしてください。これだけで大部分が防げます。

「この広告は本物かどうか」を見分けようとしないでください。見分けられないように作られているので、難しいのです。私自身、AIのレベルが上がりすぎて見分けられなくなってきています。

広告経由で投資を始めることは一生ない、と決めてしまってください。投資をしたいなら、自分で証券会社のアプリを探して、自分でインストールする。スマホやパソコンの操作が難しいなら、手数料がかかっても窓口に行ってください。誰でも名前を知っている銀行や証券会社で十分です。

2. 有名人が投資を勧めていたら、その時点で疑う

本当に儲かる話を、わざわざ知らない人に広告で教える理由がありません。

有名人の顔が出ている投資広告は、ほぼ全部なりすましだと思ってもらっていいです。

3. LINEに誘導される時点で止まる

広告からLINEグループ、LINEから個別チャット、個別チャットから専用アプリ。この流れに乗ると、どんどん戻れなくなります。

「LINEを追加してください」の時点で止まってください。なぜLINEを追加する必要があるのか、と考えてほしいのです。

4. 家族で聞ける関係を作っておく

これがいちばん大事です。

詐欺は、誰にも相談していない状態で進んでしまいます。「これ大丈夫かな」と一言聞ける相手がいれば、たいてい止められます。

親に「変な投資をしていないか」と聞くと怒られる、という方も多いと思います。だったら逆にしてください。「最近こういう詐欺が多いらしいから、自分も気をつけるわ」と、自分の話として共有するのです。そうすれば責める形にならず、一緒に警戒する方向になります。

「SNSが危ない」ではなく「広告の出し方を正せ」という話

私はSNSで仕事を作ることができた人間です。SNSでやりたいことを実現できるようになってきた立場だからこそ、「SNSは危ないから使うな」という扱いにはしたくありません。

今回の要請も、「SNSは危ないから使うな」ではなく、「広告の出し方を正せ」とプラットフォーム側に言っている話です。だから私は、良い方向性だと思っています。

ただ、実際にきちんと対応されるかは分かりません。プラットフォーム側は広告収益で成り立っているので、審査を厳しくして広告の数が減れば、自分たちの収入が減ります。そこは楽観できません。

そして何より、法律や要請は被害が深刻になってから動くものです。今回も、1年で1,288億円の被害が出てようやく動きました。国の対応を待ってから守るのでは遅いのです。

まとめ

  • 2025年のSNS型投資詐欺は9,523件、被害額1,288億円。1年で約1.5倍
  • 入り口の約4割は広告で、DMではない。従来の常識はすでにずれている
  • 7府省庁が5社に、広告主の本人確認・生成AIの表示・迅速な削除を要請した
  • 守り方は4つ。広告から投資に入らないと決める。有名人の投資広告は疑う。LINE誘導で止まる。家族で聞ける関係を作っておく

「知らない人からのDMは無視する」は、もうみんなが知っています。今日持ち帰っていただきたいのは、その1段上です。

広告も、知らない人からのメッセージと同じくらい警戒しなければならない。ここが新しい常識になります。

自分は大丈夫だと思っている方こそ、この話をご家族に共有してみてください。


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