SNSの誹謗中傷に言い返すべき?髭男「What’s Going On?」から考える心の守り方

SNSで誹謗中傷を受けたとき、一番強い反撃は「言い返すこと」ではなく「生き抜くこと」です。この記事では、Official髭男dismの「What’s Going On?」という曲を手がかりに、誹謗中傷に言い返すとなぜ状況が悪化するのか、「一人じゃない」を現実にするために何をすればいいのか、そして子どもの近くにいる大人はどうあるべきかを解説します。

「知らないアカウントから悪口が来て、頭から離れない」
「間違っているのは向こうなのに、言い返したら余計に燃えた」
「親に言ったら心配させるし、友達に言ったらどう思われるか分からない」
SNSで誰かの言葉に傷ついた経験がある人は、決して少なくありません。

この記事では、曲のメッセージを軸にしながら、「言い返さない」ことがなぜ最も強い抵抗になるのか、相談先をどう選べばいいのか、重い話をどう伝えれば届くのかを順番に整理します。今まさに傷ついている人にも、その人の近くにいる大人にも役立つ内容です。

この曲がリリースされたのは2016年。まだ髭男がインディーズだった頃の曲で、歌われているのはいじめと言葉の暴力です。ところが私には、これが2026年の今のSNSのことを歌っているようにしか聞こえません。

私は全国の学校・企業でSNS・デジタルリテラシーの講演を行っている立場から、好きな曲を通してSNS時代の生き方を考えてみたいと思います。


目次

「What’s Going On?」はどんな曲なのか

まず曲の背景から説明します。「What’s Going On?」がリリースされたのは2016年11月。Official髭男dismの1枚目のEPのタイトル曲で、作曲はボーカルの藤原さんです。「Pretender」や「宿命」といった大ヒット曲のイメージが強い髭男ですが、この曲はそれよりずっと前、インディーズ時代の作品です。

タイトルの「What’s Going On」は、1971年にアメリカのソウルシンガー、マービン・ゲイが発表した名曲と同じです。マービン・ゲイの曲は、ベトナム戦争など当時の社会問題に対して「一体何が起きているんだ」と問いかけたものだと言われています。髭男はそのタイトルを借りて、日本の社会問題、具体的にはいじめや誹謗中傷、それによって命を絶ってしまう若い人の問題に向き合ったのではないかと、私は受け止めています。

曲の中では、学校を舞台に、いじめられている状況が描かれます。他人から浴びせられる言葉の暴力。それに対して「それでも生き抜く」ということを何度も歌い続け、サビでは「一人じゃない」というメッセージが一番強く響く構成になっています。

そして特徴的なのは、明るくフレッシュな曲調なのに、歌っている内容はとても重いということです。このギャップこそが、この曲の強さだと私は思っています。

言葉の暴力は、教室からSNSへ場所を変えただけ

この曲が描いている学校でのいじめは、2016年当時はまだ教室の中の話で止まっていたかもしれません。しかし今は、教室では終わりません。家に帰ってもスマホの中で続いてしまう。しかも相手は同級生だけではなく、知らない大人からも来ます。

私は学校でSNSの講演をしている中で、いじめやSNSトラブルの話をよく耳にします。具体的には、「学校では何もされていないけれど、グループLINEから外された」「知らないアカウントから悪口が来ている」といったパターンです。これは、この曲が歌っている言葉の暴力と本質は同じです。場所が変わっただけです。

そしてSNSの方がたちが悪い。教室のいじめは、教室を出れば一旦止まりますし、学校に行かなければ防ぐことができます。しかしSNSは24時間、どこにいても届いてしまう。逃げ場がないのです。

だからこそ、この曲が2016年に歌っていたことは、今の方がずっと切実になっていると感じます。

誹謗中傷に「言い返す」となぜ悪化するのか

この曲の核になっているメッセージが「それでも生き抜く」です。私はこれをとても大事なことだと思っています。

誹謗中傷されたとき、人は普通、言い返したくなります。間違っているのは向こうだと証明したくなる。その気持ちはよく分かります。

しかしSNSでは、言い返すと大体、炎上が広がったり、火に油を注いだりします。それがたとえ正しいことだったとしても、言い返した言葉がまた切り取られて、次の攻撃材料になってしまうのです。これは私が講演でも、テレビに出演させていただいた際にもお話ししてきた内容です。

ではどうするか。この曲の答えは「生き抜くこと」です。言い返すことではなく、傷つけた言葉に自分の人生を明け渡さないこと。相手に傷つけられて、自分から命を絶ってしまったりしたら、それこそ相手の思う壺です。ちゃんと自分の人生をやっていく。ぶれない。振り回されない。これが一番の反撃です。

私自身の経験:言い返すのではなく、結果で黙らせる

少し話がそれますが、私自身の話をします。私は中学の頃、偏差値が37でした。周りからは「勉強ができない」と思われることの方が多かった。

でも私は、言い返すのではなく、とにかく勉強しました。成績を上げて、誰もが驚くような高校に入り、結局、大学は一橋大学に進みました。言い返すのではなく、そこに振り回されずに自分のやるべきことをやって、結果で黙らせる。

SNSで傷ついたときも、おそらく同じです。相手に何かを言い返すのではなく、自分の人生を前に進めて、いい人生を作る。いい生き方をした方が、相手にとっては悔しい。だから、私たちは生き抜いていこう。これがこの曲から私が受け取っていることです。

「一人じゃない」は、待っていても来ない

サビで一番強く響くのが「一人じゃない」というメッセージです。ここに私はひとつ付け加えたいことがあります。

「一人じゃない」というのは、待っていれば誰かが来てくれる、という意味ではないと思うのです。

誹謗中傷されているとき、誰かに悪く言われているとき、人は大体、誰にも言えない状態になります。親に言ったら心配させる。友達に言ったらどう思われるか分からない。だから一人で抱えてしまう。

でもこの曲が「一人じゃない」と歌っているのは、「誰かが助けに来る」ではなく、「つながれる相手はちゃんといる」ということだと思っています。だからこそ、自分から人に話す。親でもいいし、先生でもいい。親でも先生でもない、信頼できる大人でもいい。

相談できる場所は、実はたくさんあります。学校ならスクールカウンセラー。法務局の人権相談。警察の相談窓口。それぞれ、相談しやすい場所は人によって違います。だからこそ、自分にとって一番気持ちの負担が少ないところに相談すればいいのです。

私が講演をしていると、講演の後に話しかけてくれる子がいます。「誰かに言いたかったけれど、言う相手がいなかった」というパターンも、きっとあるのだと思います。言える相手が一人でもいれば、「一人じゃない」は現実になります。

大人が「相談できる存在」でいることの意味

だから私は大人に向けて、こういう話をよくしています。大人が子どもの近くにいる、話ができる存在であってほしい、と。

「SNSは危険だからやめておけ」「SNSばかりやっているんじゃない」「SNSは禁止」「勉強しなさい」。こうした言葉を投げてしまうと、子どもは相談しにくくなります。

今のSNSトラブルにはいろいろなものがありますが、一番大事なのは、近くに相談できる大人がちゃんといるかどうかだと私は思っています。相談できる大人に一人ひとりがなっていけば、SNSトラブルはもっと減らせるはずです。

そんな大人が増えていった先で、この曲のメッセージが子どもたちに届くといい。「一人じゃない」ということに子どもたちが気づき、その子どもたちの近くに信頼できる大人がいる。この曲は、そんな状況を後押ししてくれる曲なのではないかと思っています。

重いことほど、明るく伝える必要がある

最後に、この曲の作りの話をします。歌っている内容はとても重いのに、メロディはとても明るい。サビはメロディだけで言えば気分が上がるような曲です。

私はここに大きな意味があると思っています。重いことを重く伝えると、聞く側はしんどくなって離れてしまいます。届けたい人ほど離れていく。明るい曲調に乗せれば、もっと抵抗なく聞けるし、何回も聞いているうちにメッセージが染みてくる。

これはSNSの発信でも同じです。私はSNSリテラシーの講演をしていますが、「誹謗中傷は危ないです」「炎上は怖いです」といった話を深刻な顔で言い続けたら、中高生は引いてしまいます。だからこそ、具体例や身近な事例を交えながら、「こういうことに気をつけていけば大丈夫」と、少し明るく話すようにしています。明るく楽しくSNSリテラシーを学んでいく。それが私の発信のテーマです。

伝えたいことが重い場合こそ、伝え方だけでも明るく、軽くする。そうすることで、一人ひとりにきちんと届いていく。もちろん深刻に話さなければいけないタイミングもありますが、この曲はそのバランスを完璧にやっていると思います。

まとめ:今、誰かの言葉に傷ついている人へ

今回の内容を整理します。

  1. 言葉の暴力は、学校からSNSに場所が変わっただけで、ずっと残っています。今は特に、SNSのせいで逃げ場がありません。
  2. 反撃は「言い返す」ことではなく「生き抜く」こと。自分の人生を前に進めることが、一番強い抵抗です。
  3. 「一人じゃない」は、自分から取りに行くもの。言える相手が一人でもいれば、それは現実になります。大人一人ひとりが、その相手になれるように生きていきましょう。
  4. 重いことほど、時には明るく伝える。届けたい人に届けるための工夫として、覚えておいてほしい視点です。

もし今、誰かの言葉に傷ついている人がいるなら、まずスマホを閉じて、この曲を一回、いや何回も聞いてください。それから、本当に信頼できる人に話してみてください。私でも構いません。公式ホームページの問い合わせフォームから、いつでも連絡してください。

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