高校生の5人に1人が、位置情報共有アプリ「whoo(フー)」で自分の居場所を友達とリアルタイムに共有しています。この記事では、2026年6月に発表された高校生のデジタル行動調査のデータをもとに、なぜ今の高校生がwhooやBeRealを選ぶのか、その裏側にある「SNSに求めるものの変化」と、大人が「使うな」と言わずにどう関わればいいのかを解説します。
「子どもが友達と居場所を共有していると聞いて、正直ぞっとした」
「位置情報が知らない人に漏れたらどうするのか」
「危ないと言っても『友達なのになんで?』と返されて、話が終わってしまった」
保護者の方から、こうした声をよく聞きます。
この記事では、調査の数字を確認したうえで、高校生側の感覚を言葉にし、大人が聞くべきことを3つに整理します。「危ない」で止まらず、その先の「なぜ使っているのか」まで分かると、子どもとの会話が変わります。
調査の中に出てきたキーワードは「メンパ」。タイパ(タイムパフォーマンス)ではなく、メンタルパフォーマンスです。今の高校生は、心の負担が軽いSNSを選び始めています。
私は全国の学校・企業でSNS・デジタルリテラシーの講演を行っている立場から、この数字を「怖いですね」で終わらせずに、大人の関わり方まで考えていきたいと思います。
高校生のSNS利用データで分かったこと
まず、いくつか数字を並べます。
・高校生のLINE利用率:97.8%
・BeReal:32.2%(3人に1人)
・whoo:22.4%(5人に1人)
LINEの数字は想像がつくと思います。BeRealについては、以前「BeRealとは何か」というテーマで動画にもしましたが、若い人ならこれくらい使っているだろうと感じる大人も多いでしょう。
問題はwhooです。whooは、位置情報を友達とリアルタイムで共有できるアプリで、今誰がどこにいるのかが地図上に表示されます。whooの前にも位置情報共有アプリはいくつかありましたが、今の若者の中では「みんなやっている」と言っていいほど広まっています。
私は学校や保護者向けの講演をしていますが、この「2割超え」という数字は、大人がかなり驚く部分です。「居場所を共有しているの?」というのは、大人からすると違和感のある感覚だと思います。
データの出どころ
このデータは、スマホの行動ログを分析している調査会社VALUESが2026年6月に発表した「高校生デジタル行動調査」によるものです。アンケートだけではなく、実際のスマホの利用ログと組み合わせているため、「使っていると言っている」数字ではなく、「実際に使っている」数字に近いのが特徴です。
主なところを挙げると、次のような結果でした。
・スマホを1日2時間以上使う高校生:63.3%
・パソコンを使っていない高校生:54.5%
・新しい情報の入手先:SNS 52.2%、テレビ番組 26.1%
・Instagramを1日2時間以上使う:高校生16.6%、大学生10.9%
・Xを1日2時間以上使う:高校生16.3%、大学生24.2%
スマホが主戦場で、パソコンは半分以上が使っていない。情報はテレビからではなくSNSから来るものになっていて、その差はちょうど2倍です。高校生はInstagram、大学生になるとXという傾向も見えます。高校生は文字よりも写真・動画の世代ということですね。
そして、BeRealの32.2%とwhooの22.4%。この2つが「高校生に特徴的に使われているアプリ」として挙げられていました。
なぜBeRealとwhooなのか?「映え」から「ありのまま」へ
BeRealを知らない方のために説明すると、1日1回、ランダムな時間に通知が来て、その2分以内に「今の自分の状況」を撮って投稿するアプリです。加工する時間はありませんし、盛れませんし、場所によってはあまり映えないところにいたりもします。だからこそ、ありのままが出ます。
whooは先ほど説明した通り、位置情報の共有です。今駅にいる、今家にいる、ということが友達の地図に表示されます。
調査ではこの傾向を「映えからありのままへ」と表現していました。そしてもうひとつ出てきたキーワードが「メンパ」です。「メンパがいいSNS」、つまりメンタルパフォーマンスがいい、心の負担が軽いSNSという意味です。投稿に対する周りの目を気にしすぎなくていい、暇つぶし感覚でつながれる。だからBeRealとwhooが選ばれている、という分析でした。
私はこれを読んで、正直、納得してしまいました。今の高校生は、Instagramに映える投稿をするのが当たり前の時代に育っています。でも、それはしんどい。加工して、文章を整えて、いいねの数を気にして、誰が見たのかを気にして。その疲れの反動として何が流行ったかというと、「加工できないアプリ」と「投稿すらしなくていいアプリ」だったわけです。
これは、大人が思っている「SNSにはまっている高校生」のイメージとは、かなり違うのではないでしょうか。
「危ない」で止まると、子どもとの会話が終わる理由
ここから大人側の話をします。
「高校生の5人に1人が位置情報を共有している」と聞くと、保護者の方はまず「危ない」と思うはずです。この感覚は正しいです。位置情報が第三者に漏れるリスク、知らない人に居場所を知られるリスクは本当にあります。もちろん、基本的には申請を通した人しか見られない仕組みですが、どこで流出するかは分かりません。
ただ、私が講演の後に保護者の方と話していて感じるのは、「危ない」でみんな止まってしまうということです。「危ないですよね」「怖いですよね」で止まって、その先、そもそもなぜ高校生がこのアプリを使っているのか、というところまで考えない人が多いのです。
高校生がwhooを使う理由はこうです。
・友達が今どこにいるか分かると安心する
・わざわざ「今どこ?」と聞かなくていい
・集まるときに便利
「今日暇?」と連絡しなくても、位置情報で家にいれば「多分暇なんだな」と分かる。逆に「明日遊べる?」と言いたいときに、友達が遠くに旅行していたら「難しそうだな」とすぐ分かる。つまり彼らにとってwhooは「監視」ではなく「つながっている感覚」なのです。
大人にとっての「既読」に近いものだと思ってください。既読がつくと安心しますよね。緊急時などは特にそうです。その居場所バージョンが位置情報です。
だから「位置情報なんて共有するな」と大人が言っても、「え、なんで?友達なのに」と普通の顔で返ってきます。そうなると話が終わってしまう。「共有するな」ではなく、違う話し方をしなければいけないのです。
大人が子どもに聞くべき3つのこと
では、大人はどう関わるべきか。私の考えは3つです。
1. 「誰と共有しているのか」を聞いてみる
whooで一番大事なのは、共有することの是非以上に、「誰と」共有しているかです。
本当に仲のいい数人、毎日一緒に学校へ行くような友人なら、待ち合わせの手間が減るという実用性もあり、リスクも限定的です。しかし、クラス全員、一回しか会ったことのない人、SNSで知り合った人まで入ってくると、話はだいぶ変わります。
だからこそ「使うな」ではなく、「どこまで入っているの?」と聞く。それだけでも、子どもは「あれ、この人まで入れていたっけ」「誰を入れていたっけ」と、自分で気づけるかもしれません。
2. オフにする時間を一緒に決める
位置情報は、ずっとオンにしておく必要はありません。夜は切る、家にいるときは切る、ゴーストモードにする、といった使い方があります。
常時オンが当たり前になっているなら、「切ってもいいんだ」ということを知れるだけでも、だいぶ違うと思います。
3. 「メンパがいい」という感覚を大人が理解する
調査に出てきた「メンパ」という言葉は、子どもたちがSNSに疲れているというサインです。映えなければいけない、反応がないと不安だ、というしんどさから、「ありのまま」に逃げてきている。
それを「また新しい怪しいアプリにはまっている」と見るのか、「SNSに疲れてきているんだな」と見るのか。それによって、かけられる言葉は変わります。私は後者だと思っています。
だからこそ、「また新しいアプリ?」と聞くのではなく、「そっちの方が楽なの?」「気軽なの?」と聞いてあげてほしいのです。
高校生はもう、SNSのしんどさに気づいている
最後に、学校や企業で講演をしている私の立場からお伝えします。
私自身、SNSで人生が変わった側の人間です。国家公務員を辞めた後、SNSで仕事を作り、講演もできるようになりました。だからSNSは可能性を広げる媒体だと思っていますし、危ないものとして扱う気はありません。もちろん、使い方を間違えると危ない。でも「危ないものだから使うな」という話ではないのです。
今回の調査を見て思ったのは、今の高校生は、私たちの世代よりもずっと早くからSNSのしんどさに気づいている、ということです。「映え」から「ありのまま」へ、というのは、要するに「盛るのに疲れた」ということです。それは、SNSとの距離感を自分で調整し始めているということでもあります。無理しなくていい。もう疲れた。Instagramの投稿はやめて、BeRealでいい。良くも悪くも、自分がしんどくない形を自分で模索しているのです。
だから大人がやることは禁止ではなく、その動きを言葉にしてあげること。「SNSに疲れていたんだね」「楽な方がいいよね」と。そのうえで、リスクはあるのだから、そこは一緒に考えていく。
「怖い」と「便利」の間に、きちんと話せる場所を作っておくこと。ここを大事にしてほしいのです。それがまさに、この数字を見て驚いた親御さんや、お子さんと普段関わる機会がある方々のやるべきことだと思います。
まとめ:「使うな」の代わりに聞くこと
今回の内容を整理します。
- 高校生のLINE利用率は97.8%、BeRealは32.2%、whooは22.4%。情報源はSNSがテレビの2倍になっています。
- 「映え」から「ありのまま」へ。キーワードは「メンパ」、心の負担が軽いSNSです。
- whooは監視ではなく「つながっている感覚」。「使うな」と言ってしまうと、話が終わってしまいます。
- 本当に聞くべきは「誰と共有しているのか」。決めるべきは「オフにする時間」です。
- 子どもはもう、SNSのしんどさに自分たちで気づいています。大人はそこに寄り添う形で関わっていく。
これが、これからますます大事になっていく話ではないかと思っています。
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