運動会の写真はSNSに載せていい?祖父母の投稿が炎上する理由と、撮る人全員で持ちたい4つのルール

運動会の写真をSNSに載せてよいかどうかの分かれ目は、写っているのが自分の子だけかどうかです。他の子が写った瞬間、その写真は自分ひとりの判断では投稿できないものになります。この記事を読めば、祖父母の投稿や学校の公式アカウントがなぜ炎上するのかという構造と、撮る側の大人が今日から使える4つのルールが分かります。

「孫の晴れ姿を見てほしかっただけ」「学校の活動を知らせたかっただけ」——投稿した本人に悪気はありません。それでも、知らないうちに他の家の子の顔を全国に出していたり、子どもの居場所と時間を公開してしまっていたりします。家では写真の扱いに気をつけているのに、なぜか外から漏れていく。そういう不安を持つ保護者の方は少なくありません。

この記事では、祖父母による運動会の投稿と、自治体の学校公式アカウントによる修学旅行の投稿という、一見まったく逆に見える2つの事例を並べます。そこから、問題が「ネットに詳しいかどうか」ではなく「誰がルールの外にいるか」であることを整理し、立場ごとの具体策までお伝えします。

興味深いのは、炎上した学校の投稿では、生徒の顔は写っていなかったという点です。顔を隠すというルールは守られていました。それでも問題になった。隠すべきものが、顔だけではなかったからです。

私は全国の学校・地方自治体・企業でSNSリテラシーに関する講演を行っています。その立場から、このテーマを「おじいちゃん世代はネットに疎いから」という話で終わらせず、撮る側の大人全員に関わる設計の問題として考えていきます。

目次

運動会で孫の写真をSNSに投稿すると、何が問題になるのか

まず、報道されている事例から見ていきます。BSS山陰放送が、祖父母が運動会で撮った孫の写真をSNSに投稿して炎上するケースが相次いでいる、と報じていました。

問題は、孫だけでなく周りのお友達の顔がモザイクなしで写ってしまっている点です。そこから子どもの名前や通っている園の名前が特定され、防犯上のリスクにつながると指摘されています。

ここで、「おじいちゃん、おばあちゃんがネットに疎いからだ」という話で終わらせたくないのです。もう一つ、まったく逆に見える事例があります。

学校の公式Xが修学旅行の写真で炎上し、アカウント停止になった事例

2026年7月、東京都荒川区の区立中学校の公式Xアカウントが、修学旅行の様子を伝える投稿で炎上しました。生徒が駅構内の広場で体育座りをして待機している写真が含まれ、「駅の床に座らせるのはどうなのか」という批判が拡散したものです。区は7月2日付でホームページにお知らせを掲載して謝罪し、当該アカウントは停止されました。

注目したいのは、区の説明です。写真に生徒の顔は写っていないものの、「いつ、どこで、何をしているか」が分かる点が、ネットリテラシーや個人情報保護の観点から不適切だった、という趣旨の説明でした。過去の修学旅行の画像も掲載されていたことから、アカウントの停止措置が取られています。

今後は保護者専用ホームページで写真を公開する予定とされ、教職員への指導と情報発信のあり方の見直しを進めるとされています。保護者限定のページに移すという判断は、賢い対応だと思います。

なお、これは一つの区だけの話ではありません。「修学旅行中です」「無事に宿に到着しました」といった投稿が、生徒の顔がはっきり写った状態でXに上がっている例は今も見かけます。宿泊先が特定され得る情報です。

真逆に見える2つの事例に共通していたこと

祖父母の運動会投稿と、学校公式アカウントの修学旅行投稿。片方はSNSに慣れていない個人、もう片方は公式の、しかも大人の組織による発信です。立場はまったく違います。

それでも、起きていることは同じでした。子どもの写真を撮って投稿する人が、家庭のルールの外にいた、ということです。

以前の記事で、家庭のSNSルールに関する調査を取り上げました。位置情報の共有、利用時間、課金の許可——並んでいたのは、すべて「うちの子がスマホをどう使うか」のルールでした。

けれども今回の2つの事例は、どちらも子どもがスマホを使った話ではありません。大人が子どもを撮って投稿した話です。

運動会の写真を撮っているのは誰でしょうか。親、祖父母、親戚、他の子の保護者、先生。修学旅行なら、引率の先生や学校の広報担当です。

「うちは家庭でSNSのルールを決めました」と言ったとき、そこにおじいちゃん、おばあちゃんは入っているでしょうか。ほとんどの家庭では入っていないはずです。「孫の写真を上げないでね」とわざわざ伝えている家は、そう多くありません。言いにくいですし、まさか上げないだろうと思っているからです。

けれども、孫の運動会は人生でもトップクラスにうれしいイベントです。見せたい、伝えたい。悪気はゼロです。以前も触れましたが、悪意がゼロでも燃えるときは燃えます。愛情100%の投稿が、他の家の子の顔を全国に出してしまうパターンです。

「顔が写っていなければ大丈夫」はなぜ通用しないのか

学校の公式SNSは、ちゃんとしている側に見えます。組織ですし、大人が運用していますし、何らかのガイドラインもあるでしょう。

ところが区の説明を読むと、「顔が写っていなければ大丈夫」という判断で投稿されていたことがうかがえます。おそらく、学校の中ではそれがルールだったのだと思います。

けれども、燃えた理由は顔ではありませんでした。いつ、どこで、何をしているか。修学旅行の日程、移動経路、待機場所。それが公式アカウントから、ほぼリアルタイムで出ていたことです。

これまでも繰り返しお伝えしていますが、情報は組み合わせると特定になります。単体では害のない情報でも、学年、制服、駅名、時刻が揃えば絞り込めてしまう。今回は、その組み合わせを公式アカウントが自分から出していた形です。

しかも、過去の修学旅行の画像も残っていました。つまり「毎年この時期に、この経路で」という規則性まで読み取れる状態になっていた、ということです。

「顔を出さない」というルールはあった。けれども「時間と場所を出さない」というルールはなかった。学校もまた、保護者と同じように、自分たちが撮って出す側としてのルールが不足していたのです。

子どもの写真のルールは「家族の人数」ではなく「撮る人の数」だけ必要

ここが、私が一番お伝えしたいことです。

子どもの写真をめぐるルールは、同居している人の数ではなく、撮る人の数だけ必要です。

親が2人いて、2人で「子どもの顔は出さない」と決めたとします。これでルールは2人分です。けれども運動会に祖父母が4人来れば、撮る人は6人になります。他の家の保護者が50人いれば、撮る人は数十人規模です。

その数十人のうち、「うちの子の顔は上げないで」が届いているのは2人だけ。他の家の人が撮った写真に自分の子が写り込み、そのまま投稿されることは十分にあり得ます。これは親が悪いのではなく、全員にルールを届けることが物理的に不可能なのです。

だからこそ、「家庭のルール」という発想そのものを変えるフェーズに来ていると考えています。必要なのは「自分の子を守るルール」ではなく、「他人の子が写っていたらどうするか」のルールを、撮る人全員が持っている状態です。これが揃って初めて、運動会の写真は安全になります。

運動会の写真をめぐって、撮る人全員で持ちたい4つのルール

立場ごとに、具体的にお伝えします。

1.【祖父母・親戚・撮る側の大人へ】自分の子以外が写っていたら、ぼかすか上げない

これだけです。最近のスマホは写真アプリで指でなぞるだけでぼかしをかけられます。難しい操作ではありません。

設定や加工が難しいと感じるなら、そもそも他の子が写っている写真は投稿しない、と決めてしまってください。孫だけが写っている写真を選ぶ。あるいは家族のグループLINEで共有する。お友達に見せたいなら、カフェで会ったときにスマホの画面を見せればいい。これなら70代の方でも、今日から守れるはずです。

2.【保護者へ】祖父母には「私が嫌だから」ではなく「園・学校のルールで」と伝える

「上げないで」とストレートに伝えるのは角が立ちます。実の親でも義理の親でも言いにくいものです。

そこで、外のルールの形にしてください。「園から、他の子が写っている写真はSNSに出さないようにとお願いが来ていて」と伝える。実際、多くの園や学校がそうしたお願いを出していますし、最近は増えています。

自分の意見ではなく外のルールとして渡すほうが、相手も受け取りやすくなります。

3.【学校・園・公式アカウントを持つ組織へ】顔の次は「時間と場所」を出さない

顔を隠すというルールがクリアできたら、次は時間と場所です。

修学旅行や遠足の様子は、保護者にとっては気になるものです。だからこそ公開先を選んでください。保護者限定のホームページ、メール配信、学校からのお便り。荒川区が示した保護者専用ページという方向は、そのまま参考になります。

どうしても外に出すのであれば、リアルタイムをやめ、その場所を離れてから投稿する。それだけでリスクはかなり下がります。

公式の投稿は、信用される分だけ拡散もされます。公式アカウントも結局は人の手で運用されているものなので、間違えるときは間違えます。だからこそ、個人の判断に任せず、ルールとして定めておくことで間違いを減らしてほしいのです。

4.【全員へ】他の子が写った瞬間、その写真は自分だけでは投稿できないものになる

自分の子の分は自分で決められますが、他の子の分は決められません。だから、他の子が写り込んだ瞬間に、その写真は自分ひとりの持ち物ではなくなります。この一点を共有できるかどうかだと思っています。

私自身も、出かけた先で撮った写真に他の方が写り込んでいたときはモザイクをかけるようにしています。レストランなどでも基本的なことのはずですが、社会全体ではまだ意識が追いついていないのが現状だと感じます。

まとめ:運動会の写真は、家庭のルールから「撮る人全員のルール」へ

今回の内容を整理します。

・祖父母が運動会で撮った孫の写真をSNSに投稿し、他の子の顔が写ったまま拡散して炎上する例が相次いでいる。子どもや園の名前が特定される防犯上のリスクがある
・2026年7月、荒川区の区立中学校の公式Xが修学旅行中の写真で炎上し、アカウント停止に。区は、顔は写っていないが「いつ、どこで、何をしているか」が分かる点を不適切と説明した
・立場は真逆でも、共通していたのは「撮って投稿する人が家庭のルールの外にいた」こと
・家庭のSNSルールは「子どもがどう使うか」に偏っていて、「大人がどう撮って出すか」が抜けている
・情報は組み合わせると特定になる。顔を隠すだけでなく、時間と場所を出さない設計が要る
・対策は4つ。他の子が写ったらぼかすか上げない。祖父母には外のルールとして伝える。組織は公開先を限定し、リアルタイム投稿をやめる。他の子が写った写真は自分だけでは投稿できないと考える

私は、運動会の写真を撮るなとは思いません。祖父母が孫の姿を見せたい気持ちも、学校が生徒の頑張りを伝えたい気持ちも、よく分かります。SNSは本来、そういううれしさを共有するための道具であってほしいと思っています。

ただ、子どもの写真は撮った人のものではなく、写っている一人ひとりのものです。運動会のシーズンに一度でいいので、おじいちゃん、おばあちゃんも含めて、家族でこの話をしてみてください。

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