闇バイトの入り口はどこ?Instagramのストーリーズから広がる手口と大人が伝えること

闇バイトの入り口は、怪しい求人サイトや知らない人からのDMだけではありません。同年代の知り合いがInstagramのストーリーズに流した投稿が入り口になった事件があります。この記事を読めば、従来の「知らない人に気をつけろ」という注意喚起では防げない手口の構造と、中高生・保護者がそれぞれ何を知っておくべきかが分かります。

「知らない人からの甘い話に乗るなよ」
「高額バイトの求人は怪しいと思え」
大人はそう伝えます。私も講演で言っています。間違っていません。けれど、この言い方が当てはまらない事件が起きています。

この記事では、2026年10月に公判が報じられた事件の証言をもとに、入り口がどこにあったのかを整理します。

意外に思われるかもしれませんが、この事件のリクルーター役になった高校生は、犯罪行為が行われるだろうと分かっていたと証言しています。騙されたのではなく、分かっていて繋いでしまった。ここが一番考えてほしいところです。

私は全国の学校・PTA・企業・地方自治体でSNSリテラシーやメディアリテラシーの講演を行い、塾で生徒に勉強を教える仕事もしています。中高生とその保護者の方に一番届いてほしい内容です。

目次

何が起きたのか

2026年5月、栃木県上三川町で、69歳の女性が自宅で殺害され、息子さん2人が大きな怪我をする強盗殺人事件がありました。飼い犬も被害に遭っています。

実行役は当時16歳の少年4人でした。

報じられている事実

2026年10月2日、この事件でリクルーター役だった18歳の男子高校生の公判が相次いで報じられました。実行役の少年を「仕事」に紹介した役です。

罪名は職業安定法違反(有害業務目的)。検察の求刑は拘禁1年6か月で、弁護側は執行猶予を求めました。判決は11月19日とされています。本人は基礎となる事実関係については間違いないと認めています。

証言の要点

報じられている証言の要点は次のとおりです。

  • 同年代の知り合いの少年が、Instagramのストーリーで「1,000万円入る仕事がある」と発信していた
  • 金塊を取り返す仕事だと聞いた
  • 犯罪行為が行われるんだろうなと思った
  • お金に困っていた別の少年から、闇バイトを紹介してほしいと前から言われていたので紹介した
  • 紹介した少年は乗り気だった
  • 止めなかった理由は「自分が行かなければいいや」という身勝手な考えがあった

私がこの公判で一番聞いてほしいのは、最初の一文です。知り合いのInstagramのストーリーで見た、という部分です。

「知らない人からの甘い話」では防げなかった

闇バイトはどこから入ると思いますか。求人サイト、知らない人からのDM、匿名性の高いメッセージアプリ。そう思っている方が多いと思います。

でもこの事件の入り口は、同年代の知り合いのInstagramのストーリーでした。

入り口は同年代の知り合いのストーリーズだった

発信していたのは知らない人ではありません。同年代の知り合いです。しかもDMではなく、24時間で消えるストーリーズです。いつも通りの投稿の中に混ざっていました。

日常の流れに同じ顔で混ざっている

ストーリーズはどういう場所かというと、友達の今日のご飯、遊びに行った写真、好きな曲。日常が流れている場所です。

そこに「1,000万円の仕事」が、同じ顔で流れてきた。

見る側に、怪しいサイトを見ている感覚はありません。友達のストーリーを見ている感覚です。だから警戒心が立ち上がらないんですよね。

以前YouTubeで、高校生のLINE利用率が97.8%、Instagramが85.8%という数字を紹介しました。ほとんどの高校生が、毎日この日常の流れの中にいます。

その流れの中に、闇バイトの入り口が普通の顔をして置いてある。闇バイトは怪しい場所にあるのではなく、いつもの場所に紛れ込んでいます。手口がどんどん巧妙になっている、ということです。

もう1つの構造:「紹介」には覚悟がいらない

もう1つ見てほしいのが、紹介の構造です。

この高校生は、自分が実行したわけではありません。お金に困っている知り合いがいた。闇バイトを紹介してほしいと言われた。ストーリーで見た仕事を繋いだ。本人の言葉では「自分が行かなければいいや」です。

これが闇バイトの一番怖いところだと私は思っています。

実行役になるには相当の覚悟が必要です。でも紹介は、覚悟がいらないんですよね。困っている友達に、聞いた話を教えただけ。言っただけ、繋いだだけ、何もしていない。本人の感覚では、親切に近いかもしれません。

繋いだ時点で加害者側になる

でも法律上は、職業安定法違反(有害業務目的)という犯罪です。人が1人亡くなっている事件の入り口を作った、ということになります。

友達の相談に乗る。知っている情報を教える。いつもやっていることの延長で、人が命を失う事件のリクルーターになってしまう。

実行していなくても、繋いだ時点で加害者側です。これは本当に中高生に知っておいてほしいことです。

「だけ」がつく言葉に気をつける

細かいけれど大事な点がもう1つあります。

「取り返す仕事」という言い方

この高校生は、「金塊を取り返す仕事」だと聞いたと証言しています。強盗だとは言われていないんです。

「取り返す」という言葉だと、相手が悪い人で、こちらは正しいことをするように聞こえますよね。

闇バイトの勧誘には、こういう言い方が多いです。荷物を受け取るだけ。見張っているだけ。取り返すだけ。「だけ」がつくんです。

「だけ」がつくと、人は大したことがないと思ってしまいます。でも「荷物を受け取るだけ」のその荷物が、持っているだけで犯罪になるものだったりするわけです。

分かっていて入る子も同じくらいいる

そしてこの高校生自身、犯罪行為が行われるんだろうなと思っていたと証言しています。

つまり、分かっていたんです。分かっていて、「自分が行かなければいいや」で繋いでしまった。

騙されて闇バイトに入る子もいます。でも、分かっていて入る子も同じくらいいます。分かっているけど1,000万円。分かっているけど自分が実行するわけじゃない。この「分かっているけど」を、どう止めるかが課題なんですよね。

中高生に伝えたい2つのこと

1. ストーリーズで見た仕事は疑う

求人は求人サイトにあります。ストーリーに仕事が流れてきたら、それだけで疑ってください。発信しているのが友達でも同じです。

なお、SNSの広告審査は現状かなり緩いです。政府が審査を強化する方向で動いていますが、義務として本格的に実行されるのはもう少し後になります。

私が見ても怪しいと思う案件がたくさん流れてきますし、普通の人が見たら信じてしまいそうな案件もあります。だから、広告で見た案件にすぐ申し込まないことを徹底してください。

2. 「紹介して」と言われたら「知らない」と言う

お金に困っているから闇バイトを紹介してほしい、と友達に言われたとしても、知らないと言って切ってください。

知っていても、知らないと言ってください。

それがその友達を守ることにもなり、あなたを守ることにもなります。「自分が行かなければいいや」が一番危ない。繋いだ時点で、あなたも加害者です。

大人に伝えたい2つのこと

1. 「怪しい人に気をつけろ」はもう古い

怪しい人に気をつけることは、もちろん引き続き必要です。でもそれだけでは、この事件は防げていません。

これからは、「友達の投稿にも仕事やお金の話が混ざってくる」ということを伝えてください。知らない人からのDMを無視しなさい、だけでは足りないんです。

友達が紹介してくれたバイトに行ってくる、という話が出たときに、それはどういう仕事なのかを必ず詳しく聞いてください。本当にただの知り合いのご家族の手伝いかもしれません。でも詳しく話さなかったら、余計に疑ってください。

1人の人生が棒に振られる可能性を、大人が止めてください。

2. 「お金に困っている」と言える関係をつくる

今回、実行役になった少年はお金に困っていました。

その「困っている」を、ストーリーズで流れてきた知り合いではなく、親や先生に言えていたらどうだったのか。言えなかった理由は分かりません。でも、お金のことを家で言えない子は、外に答えを探しに行きます。ここは確かです。

以前、詐欺広告について取り上げた回でも同じことを言いました。SNS由来の事件を防げるかどうかは、近くにいる大人と子どもがちゃんと会話できているかが鍵を握っています。

一方的に「SNSばっかり見ているんじゃない」「スマホばっかり見て」と圧力をかけるのではなく、もっとフラットに話せる関係を作ってほしいんです。保護者の方だけでなく、学校の先生もそうだと思っています。

日常の中の違和感に気づける力を育てる

最後に私の立場をお伝えします。

私はSNSを、人生を豊かにする道具だと思っています。これは今も変わりません。Instagramのストーリーズも、友達と繋がれて、友達のことを深く知れる、いい機能だと思います。

でもこの事件では、そのいい機能が入り口になりました。

ストーリーズが悪いのではありません。ストーリーズの中に怪しい仕事が混ざったときに、異常だと感じる感覚が育っていなかった。ここが問題なんです。

私が講演で伝えたいのは、SNSを使うなという話ではありません。日常の中に日常じゃないものが混ざったときに気づける力を作ろう、という話です。

SNSを使わずに生きていくのは、これからの時代は無理です。だからこそ、日常の中の違和感に気づける力を高めていきたい。

友達のストーリーズに1,000万円の話が流れてきた。その瞬間に「おかしくないか」と思えるかどうか。そしてちゃんと止まれるかどうか。それが人の命に関わる分かれ目になってしまいました。

正直なところ、こうした事件を企てる側を減らすのは難しいと思っています。だからこそ、乗ってしまう側の私たちがリテラシーを高めて止まれるかどうかが、めちゃくちゃ大事になります。

亡くなられた女性とご家族に、心からお悔やみを申し上げます。他人事と思わず、自分の身にも、自分の子どもにも起こり得ることとして考えていただけたら嬉しいです。

まとめ

  • 2026年5月の栃木県上三川町の強盗殺人事件で、リクルーター役だった18歳の男子高校生の公判が10月に報じられた。罪名は職業安定法違反(有害業務目的)、求刑は拘禁1年6か月、判決は11月19日
  • 入り口は求人サイトや知らない人からのDMではなく、同年代の知り合いのInstagramのストーリーだった
  • ストーリーズは日常が流れる場所なので、怪しい仕事が混ざっても警戒心が立ち上がらない
  • 実行役には覚悟が必要だが「紹介」には覚悟がいらない。それでも繋いだ時点で加害者側になる
  • 勧誘には「受け取るだけ」「見張るだけ」「取り返すだけ」と「だけ」がつきやすい
  • 本人は犯罪行為が行われると分かっていた。騙される子だけでなく「分かっているけど」で入る子も多い
  • 中高生は、ストーリーズで見た仕事を疑う/「紹介して」と言われたら「知らない」と言う
  • 大人は、「友達の投稿にも仕事の話が混ざる」と伝える/「お金に困っている」と言える関係をつくる

SNS教育講演会のご相談を承っております

SNS教育講演家の櫻井健太は、全国の学校・PTA・教育機関・企業・各種団体様を対象に、SNSリテラシーやメディアリテラシーに関する講演会を実施しています。

SNSトラブルや誹謗中傷、スマホ依存、闇バイト、ネット詐欺、生成AIによるフェイク画像・フェイク動画など、対象者やご希望に合わせて講演内容を調整いたします。

SNSの危険性を一方的に伝えるのではなく、SNSやAIが持つ可能性にも触れながら、「禁止する」のではなく「自分で考えて正しく使えるようになる」ことを大切にしています。

小学生・中学生・高校生・保護者・教職員向けの講演に対応しております。開催内容や料金、講演時間などについては、以下のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

▶ SNS教育講演会について相談する

YouTubeでもSNSの最新情報を発信しています

YouTubeでは、SNS教育講演家の視点から、SNSで話題になったニュースや炎上事例、ネット詐欺、誹謗中傷、スマホとの付き合い方などを分かりやすく解説しています。

子どもたちに伝えたいSNSの知識はもちろん、保護者や教職員、大人のSNS利用にも役立つ内容を発信しています。

SNSや生成AIを安全に活用するための知識を身につけたい方は、ぜひ動画もご覧ください。

▶ 櫻井健太のYouTube動画を見る

チャンネル登録もしていただけるとうれしいです。

電子書籍でもSNSリテラシーについて発信しています

Amazon Kindleでは、子どもたちのSNS利用や、保護者・教育関係者に知っていただきたいSNSリテラシーについてまとめた電子書籍を出版しています。

講演会やYouTubeとあわせて、ぜひご覧ください。

【PR】▶ SNSリテラシー関連書籍をAmazonで見る

目次