デマは確かめるべき?否定声明まで偽造される時代に、黙って通り過ぎる3つの動き

今のSNSでは、デマを「本物か偽物か見分ける」という作戦がもう成立しません。否定する側の声明まで偽造されるからです。この記事を読めば、見分ける材料そのものが捏造できる状況で、私たちが取るべき3つの具体的な動きが分かります。

「本当なのかどうか、ちょっと調べてみよう」
「事務所が否定したらしいから、デマだったんだな」
どちらも自然な反応です。けれど今は、その調べる行為そのものが拡散の燃料になり、否定の情報自体が偽物である場合があります。

この記事では、2026年10月に実際に起きた拡散の流れを、固有名詞を出さずに構造だけ整理します。

意外に思われるかもしれませんが、「騙されないで」という善意の警告投稿も、拡散の一部になってしまいます。ここが今回いちばんお伝えしたいところです。

私は全国の学校・PTA・企業・地方自治体でSNSリテラシーやメディアリテラシーの講演を行い、毎日SNSのデマや炎上の事例を確認しています。その視点から書きます。

目次

何が起きたのか

2026年10月5日の夜から、ある女優の方について「流出した映像がある」という投稿がX で急増しました。短時間で400万回以上表示された投稿もあります。

翌日の朝から昼にかけては、「何年前に撮られたものだ」「どこで取引されていた」といった筋書きの投稿が360万回以上表示されました。昼には、過去のSNS投稿と見比べたまとめのようなものが回りました。

そして昼から夜にかけて、「動画と写真を持っている」「いくらで売る」「DMをください」という内容が、ほぼ同じ文面でいろいろなアカウントから数分おきに投稿され続けました。短縮URLやアプリの紹介ページへの誘導も混ざっています。

これは珍しいことではありません。芸能人について「流出した」と称して、その映像を持っているから取引すると持ちかける投稿は、毎月のように起きています。

「流出した」も「否定した」も確かめられない

10月7日の昼には、事務所が否定したという声明の画像が拡散されました。

声明が出たんだな、と受け取った人も多かったと思います。ところがその後、その画像は偽物だという指摘が複数出てきました。

つまり、流出したという情報も確かめられず、否定の声明も確かめられない。本人も事務所も、この時点で公式には何も出していない状態でした。

タイムラインに流れていたものは、「流出した」も「否定した」も、どちらも誰が作ったか分からないものだったということです。

なお、拡散されていた引用のほとんどは公式の発表ではなく、第三者の記事へのリンクでした。リンクをクリックさせるために名前が使われていた、ということです。

「ほくろの位置」「服が似ている」は根拠にならない

根拠として挙げられていたものを見てみます。ほくろの位置が同じ、服が似ている、といったものです。

これは根拠に見えるかもしれませんが、少し考えれば分かります。

ほくろの位置が近いことは、その映像が本人のものである証明にはなりません。似た位置にほくろがある人はいますし、描くこともできます。

服が似ているのも同じです。同じブランドかもしれないし、似たデザインかもしれないし、意図的に寄せているだけかもしれません。

さらに今は、公開されている写真から別の画像や映像を作る技術が普通に出回っています。画質が良いことも、生成されたものではないという材料にはなりません。

そして、映像をきちんと検証した第三者の報告は1つもありませんでした。

つまり、本物だと言える材料も、偽物だと言える材料も、どちらもないということです。

以前、デマについての記事で「そもそも元があるかどうかを確認しよう」という話をしました。今回のほくろや服は、元の根拠ではありません。根拠があるように見せるための飾りのようなもので、どうとでも言えてしまいます。

一番怖いのは「否定声明の偽造」

これまでのデマ対策には、「公式の情報を確認しよう」という方法がありました。

デマが流れたら、本人か事務所が否定する。それを見て、デマだったんだと分かる。この流れです。

でも今回は、その否定する側の声明すら偽造されました。

否定の捏造はどちらにも使える

何が起きたかというと、まず「事務所が否定した」という画像を見て安心し、デマだったんだなと通り過ぎた人がいます。

でもその否定自体が、誰が作ったか分からない偽画像でした。

そして今度は、その声明が偽物だと指摘されたことで、「否定が偽物ということは、本当なんじゃないか」と逆方向に読む人まで出てきます。

否定の捏造は、デマを「否定された事実」にもしないし、「否定すらできない事実」にもできてしまう。つまり、どちらにも使えてしまうんですよね。

目的はインプレッションと誘導

なぜこんなことが起きるのか。インプレッションを稼いだり、怪しいサイトをクリックさせたりするためです。

最近は、クリックされるだけで収益が発生するモデルもあります。そのために適当なことを言って誘導する投稿が、SNSでは横行しています。

見分ける作戦はもう成立しない

ここまで来ると、本物か偽物かを見分けるという作戦は、もう成立しません。

見分ける材料そのものが捏造できるからです。

確かめられないものは黙って通り過ぎる。3つの動き

では、どうすればいいのか。私の答えは、確かめられないものは、第三者がわざわざ確かめようとしなくていい、ということです。

気にするな、スルーしろという精神論ではなく、具体的な動きを3つ書きます。

1. 検索しない

本当なのかな、と思って名前と組み合わせて検索する。この検索が燃料になります。

検索すればその分だけ閲覧数が増え、トレンドにも乗ります。いいことが1つもありません。

しかも実際に検索すると、「送金してくれたら送る」「DMをください」といった投稿が並びます。検索する人がいるから、引っかかる人を狙って投稿する人がいるわけです。

2. 根拠を見に行かない

ほくろが、服が、と言われると、見て確かめたくなるかもしれません。でも、見て確かめても答えは出ません。材料がないからです。

推論の材料にはなっても、断言の根拠にはまったくなりません。

確かめられないものを確かめようとしている時間は、すべて適当なことを言って拡散している人たちの収益になってしまいます。

3. 「否定された」も鵜呑みにしない

事務所が否定したらしいと聞いても、公式サイトか公式アカウントに出ていないなら、それは確認できていません。

安心するのもまだ早い。分からないものは、分からないままで止めましょう。

そもそも、第三者の噂に自分の人生のリソースを取られている場合ではないと思います。部屋の掃除をしていたほうが、よっぽど有益です。

「黙って」の部分がいちばん大事

私は「黙って通り過ぎよう」と言っていますが、この「黙って」の部分が大事です。

今回、「騙されないで」という警告の投稿もたくさん流れました。善意の投稿です。

でもその警告の投稿も、名前を含んでいます。その言葉が流れるたびに検索に乗り、知らなかった人がまた知ることになる。

「これはデマです」と書いた投稿が、デマの名前を次の人に運んでしまっているんですよね。

だから、黙っていればいいんです。「本当かな」も言わない。「デマらしい」も言わない。「気をつけて」も言わない。

本当に本人を守りたいなら、何も言わないことです。誰も拡散しない、誰も騒がない。以上です。

これができるようになっていけば、偽の画像や「流出した」と称する投稿を作る人も減っていくのではないかと思っています。

「元」の定義を1段厳しくする

私はこれまで、何かが流れてきたときは元の証拠を見ましょうと言い続けてきました。

でも否定の声明まで捏造される時代になったら、「元」の定義を1段厳しくしないといけません。

最近は公式アカウントを装ったアカウントも非常に多いです。ですので、元とは「本人か事務所の公式サイト」です。

画像ではダメです。スクリーンショットでもダメです。「記事によると」もダメです。それ以外は、全部「確認できていない」に等しいと考えてください。

公式サイトであれば、検索上位に出てくるのは基本的に歴史のあるきちんとしたサイトです。急に作られた偽サイトは、通常は上位に出てきません。まれに広告枠で無理に上位表示されている場合があるので、広告を飛ばしたうえで一番上に出てくる公式サイトを見るのが、現状では最も確実だと思います。

そして公式サイトで何も言っていないなら、何も分からないということです。分からないから調べるのではなく、通り過ぎる。調べれば調べた分だけ、新しい人に知られる燃料になり、拡散している側の収益になります。

本人が何も言っていないのに、何百万人が本物か偽物かを議論している。この議論自体が、本人にとって一番の加害です。ここが今回の件の最大の問題だと思っています。

まとめ

  • 2026年10月、ある女優の方について「流出した映像がある」という投稿が急増し、400万回以上表示された投稿もあった
  • 根拠とされた「ほくろの位置」「服が似ている」は、本人のものである証明にはならない。検証した第三者の報告も存在しなかった
  • 10月7日に「事務所が否定した」という声明の画像が拡散されたが、その画像が偽物だという指摘が出た
  • 本人も事務所も公式には何も出しておらず、「流出した」も「否定した」もどちらも出所不明だった
  • 否定の捏造は、デマを「否定された事実」にも「否定すらできない事実」にもできてしまう
  • 見分ける材料そのものが捏造できるため、本物か偽物かを見分ける作戦は成立しない
  • 取るべき動きは、検索しない/根拠を見に行かない/「否定された」も鵜呑みにしない
  • 「デマです」「気をつけて」という善意の投稿も名前を運ぶため、本当に守りたいなら何も言わない
  • 「元」とは本人か事務所の公式サイト。画像・スクリーンショット・「記事によると」は確認できていないに等しい

SNS教育講演会のご相談を承っております

SNS教育講演家の櫻井健太は、全国の学校・PTA・教育機関・企業・各種団体様を対象に、SNSリテラシーやメディアリテラシーに関する講演会を実施しています。

SNSトラブルや誹謗中傷、スマホ依存、闇バイト、ネット詐欺、生成AIによるフェイク画像・フェイク動画など、対象者やご希望に合わせて講演内容を調整いたします。

SNSの危険性を一方的に伝えるのではなく、SNSやAIが持つ可能性にも触れながら、「禁止する」のではなく「自分で考えて正しく使えるようになる」ことを大切にしています。

小学生・中学生・高校生・保護者・教職員向けの講演に対応しております。開催内容や料金、講演時間などについては、以下のお問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

▶ SNS教育講演会について相談する

YouTubeでもSNSの最新情報を発信しています

YouTubeでは、SNS教育講演家の視点から、SNSで話題になったニュースや炎上事例、ネット詐欺、誹謗中傷、スマホとの付き合い方などを分かりやすく解説しています。

子どもたちに伝えたいSNSの知識はもちろん、保護者や教職員、大人のSNS利用にも役立つ内容を発信しています。

SNSや生成AIを安全に活用するための知識を身につけたい方は、ぜひ動画もご覧ください。

▶ 櫻井健太のYouTube動画を見る

チャンネル登録もしていただけるとうれしいです。

電子書籍でもSNSリテラシーについて発信しています

Amazon Kindleでは、子どもたちのSNS利用や、保護者・教育関係者に知っていただきたいSNSリテラシーについてまとめた電子書籍を出版しています。

講演会やYouTubeとあわせて、ぜひご覧ください。

【PR】▶ SNSリテラシー関連書籍をAmazonで見る

目次