チャンネル登録者数やフォロワー数は、その人の人格や信頼性を保証する数字ではありません。この記事を読めば、なぜ私たちが数字を人格と錯覚してしまうのかが3つの理由で整理でき、子どもと話すときの具体的な聞き方まで分かります。
「この人は登録者が1000万人もいるんだよ。すごい人なんだよ」
「フォロワーが多い人が言っているなら本当なんじゃないか」
子どもだけでなく、大人もこう考えてしまうことがあります。けれど、数字が測っているものと、人として信頼できるかどうかは、別の軸なんですよね。
この記事では、2026年10月に報道された事例をきっかけに、「数字は何を保証しているのか」を整理します。
意外に思われるかもしれませんが、この件で「だからYouTuberなんて信じるな」と言うのは、それこそ数字で人格を判定しているのと同じことです。ここも含めて考えていきます。
私は全国の学校・PTA・企業・地方自治体でSNSリテラシーやメディアリテラシーの講演を行っています。発信する側でもある立場から書きます。
何が起きたのか
まず数字を1つ紹介します。1,800万人超。
これはYouTuberのヴァンビさんが運営するチャンネル「スパイダーヴァンビ」の登録者数です。日本のYouTubeチャンネルで最速、374日で1,000万人を超えた記録を持っています。メインチャンネルにも200万人を超える登録者がいます。
報道されている事実
2026年10月1日、36歳のヴァンビさんが、東京・六本木のクラブで20代の女性の下半身を触った疑いで、東京都の迷惑防止条例違反の疑いで現行犯逮捕されたと報道されました。酒に酔った状態だったとも報じられています。
所属事務所は、報道を見て知ったとして、事実関係を確認中としています。
先に書いておくと、これは容疑の段階で、認否も報道されていません。ですので、この記事は「この人が悪い」という話をするものではありません。ここから先は捜査と本人の説明を待つしかないので、SNSで飛び交っている憶測はすべて真偽が不明です。過激な情報に騙されないよう気をつけてください。
私が書きたいのは、むしろこちらです。フォロワー数は信頼の証明とは限らない、という話です。
1,800万人が登録している。でもそれは、1,800万人がこの人の人格を保証しているという意味ではありません。この当たり前のことが、SNSではめちゃくちゃ分かりにくくなっています。特に子どもにとっては。
登録者数は何を測っている数字なのか
子どもがYouTuberに憧れるとき、見ているのはやはり登録者数だと思います。この人は1,000万人もいる、すごい人なんだ、と。
では、登録者数は何を測っている数字なのでしょうか。
登録者数が測っているのは、「この人の動画をまた見たいと思った人の数」です。それだけなんですよね。
面白い動画を作る能力、見たくなるサムネイルを作る能力、アルゴリズムに乗る能力。これは本当にすごい能力です。1,800万人を集めるのは誰にでもできることではありません。心からすごいと思います。
でも、動画が面白いということと、人として信頼できるということは、別の軸です。測っているものが違います。
以前、ある女優さんのなりすましアカウントについて解説したとき、「いいねが1万4,000件あっても、それが本物であることは保証しない」という話をしました。今回も同じ構造です。数字は、その数字が測っているものしか保証しません。
なぜ数字を人格と錯覚してしまうのか
理由は3つあると思っています。
1. SNSでは数字しか見えない
テレビの時代は、芸能人の人格を、見た目や言葉、周りの評価から判断していました。
SNSではそれが全部数字に置き換わります。登録者数、フォロワー数、再生数。人格を判断する材料が、かなり数字に寄ってきているんですよね。
2. 「みんなが見ている」が「みんなが認めている」に変わる
1,800万人が登録しているということは、1,800万人がこの人を認めている、というように感じてしまう。
でも登録している人のほとんどは、動画が面白いから登録しています。人格を審査して登録している人なんて、いないわけです。
数字は「審査済み」という意味にはなりません。
3. 憧れが信頼にすり替わる
これが子どもにとって一番危ないところです。
この人みたいになりたい、という憧れは健全だと思います。でも、憧れている相手の言うことを全部信じる、買うものを真似する、価値観まで真似する。ここまで行くと、憧れが信頼にすり替わっています。
憧れは「この人の動画が好きだ」。信頼は「この人の言うことは正しい」。この2つは全く別物です。
「YouTuberなんて信じるな」は筋違い
この件で言いたくないことを先に書いておきます。
「だからYouTuberなんて信じちゃダメだ」「SNSなんか信じるものじゃない」「ほら、やっぱり」。こういう言葉もSNSにたくさん流れてきました。
これは筋違いだと私は思っています。
私自身がYouTubeで発信しているからでもありますが、YouTuber全部ダメ、と主語を大きくしてしまうと、誠実にやっている方まで一緒にされてしまいます。実際、誠実に活動している方にも変な噂はすぐ流されます。
YouTuberだからと一括りにするのは、それこそ数字で人格を判定しているのと同じことです。
私が言いたいのは、数字が大きい人と信頼できる人は、別の基準で見る習慣を持とう、ということだけです。
保護者・先生が子どもと話すときの3つの入り方
この件を子どもと話すときに、どう扱うか。3つ挙げます。
1. 「この人の何が好きか」を聞く
子どもが憧れているYouTuberがいたら、登録者数ではなく「この人の何が好きなの」と聞いてみてください。
動画が面白い、編集がすごい、企画がすごい。こういう答えが出てくるなら、ちゃんと動画を見ています。
でも「すごい人だから」という答えが返ってきたら、数字で見ている可能性があります。数字の大きさに引っ張られて憧れているのかもしれません。
2. 「面白い」と「正しい」を分けて話す
「この人の動画は面白いよね。じゃあ、この人が言っていることは正しいと思う?」
この質問を一度してみてほしいんです。
子どもは、たぶん「分からない」と答えると思います。それでいいんです。面白いと正しいが別のものだと気づくだけで十分です。
3. 個人を叩かず一般論に戻す
これが一番大事かもしれません。
「この人が捕まった」ではなく、「登録者が何千万人いても、人としてどうかは別の話だよね」という形で話してください。
これは芸能人でもYouTuberでもスポーツ選手でも同じです。野球がうまいことと、人格がどうかは、全然別の話なんですよね。
特定の人を叩く形になってしまうと、その人が好きだった子は「推しを否定された」という気持ちになってしまいます。具体の事例が起きたときも、抽象や構造に戻していく。そうすれば、分け隔てなく理解してもらえると思います。
発信する側として考えていること
私も発信している立場なので、考えていることを書いておきます。
数字は入り口、信頼は中身
フォロワー数が多い人は、やはりすごいと思います。私自身はフォロワー数も影響力も大きくありません。だからといって、数字を追っていないわけでもありません。外から見られる数字は、信頼の材料として確かに機能します。
ただ、数字はあくまで入り口であり、足切りでしかないと思っています。信頼は明確に中身です。
数字が増えても信頼が増えていなければ、見られているだけなんですよね。
数字は一瞬で意味を変える
今回の件で、1,800万人という数字の意味が、一晩で「この人を信頼していいのか」という問いに変わりました。
数字は一瞬で意味を変えてしまいます。
そして信頼の恐ろしいところは、日々の行動を1つずつ積み上げるしかないのに、崩れるときは一瞬だということです。1,800万人という数字は何かあってもすぐには崩れません。でも信頼は一瞬で崩れます。
だから発信する側も、数字が大きいから信頼されている、と認識しないこと。数字が大きいから何をしてもいい、偉いんだ、と思い始めると、どんどんおかしくなっていきます。
私が目指しているのは、数字が信頼の結果になることです。信頼を積んだ結果として数字がついてくる。この順番を間違えないようにしたいと思っています。
まとめ
- 2026年10月1日、チャンネル登録者1,800万人超のYouTuber・ヴァンビさんが、東京都の迷惑防止条例違反の疑いで現行犯逮捕されたと報道された。容疑の段階で認否は報道されておらず、事務所は事実関係を確認中
- 登録者数が測っているのは「また見たいと思った人の数」で、人格や信頼性を保証する数字ではない
- 数字を人格と錯覚する理由は、SNSでは数字しか見えない/「みんなが見ている」が「みんなが認めている」に変わる/憧れが信頼にすり替わる、の3つ
- 「だからYouTuberなんて信じるな」は、数字で人格を判定するのと同じ構造で筋違い
- 子どもと話すときは、「この人の何が好きか」を聞く/「面白い」と「正しい」を分ける/個人を叩かず一般論に戻す
- 数字は入り口で、信頼は中身。数字は一瞬で意味を変えるが、信頼は日々の行動でしか積み上がらない
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