日本のSNS規制は、海外のような「◯歳未満は使わせない」という禁止ではなく、「使っているのが誰なのかを確認する」という年齢確認から入ろうとしています。この記事を読めば、今どこまで議論が進んでいるのか、なぜ日本が一律禁止を選ばないのか、そして法律を待たずに家庭で今日からできることが分かります。
「何歳から使わせていいんでしょうか」
「うちの国も禁止になるんですか」
子どもにスマホを持たせるタイミングで、こうした悩みを抱える保護者の方は少なくありません。ニュースで「オーストラリアが16歳未満のSNSを禁止」と聞けば、日本もいずれ禁止されるのだろうと考えるのが自然です。
この記事では、実際に国内で検討されている内容を整理したうえで、「年齢確認」と「禁止」がまったく別のものであることをお伝えします。ここが区別できると、日本がどこへ向かっているのかがはっきり見えてきます。
意外に思われるかもしれませんが、国が2027年の法改正で実現しようとしていることの多くは、実はすでにお手元のスマホの設定画面にあります。つまり、法律を待つ必要がない部分がかなりあるのです。
私は全国の学校・PTA・企業でSNS・デジタルリテラシーの講演を行っています。その立場から、このテーマを「危ないから取り上げる」という話ではなく、「禁止か自由かの二択をやめる」という話として考えていきたいと思います。
日本で今検討されていること
まず、動きを整理します。
日本には現在、青少年インターネット環境整備法という法律があります。この見直し作業を、こども家庭庁が進めています。
6月に有識者会議が中間整理の案を出し、そこで挙がったのが次の3点です。
- SNS事業者に、利用者の年齢確認を義務付けること
- 事業者に、子どもへのリスクを評価させること
- 長時間利用につながる機能への対策をすること
3つ目は、まさにアルゴリズムや中毒性の高い設計をどう扱うのかという論点です。別の記事でも取り上げましたが、「アルゴリズムをオフにする権利」のような考え方を検討している国も出てきています。
目標は、2027年の通常国会に改正案を出すこととされています。並行して、総務省も未成年の年齢確認を厳格化する報告書案をまとめています。
いずれもまだ検討段階で、法律になったわけではありません。ただ、方向性は少しずつ見えてきている状態です。
海外は「使わせない」、日本は「誰が使っているかを確認する」
海外はかなり明確に「使わせない」方向へ舵を切っています。オーストラリアの16歳未満のSNS禁止、フランスの15歳未満の規制などです。
それに対して日本は、まず「誰が使っているのかを確認する」という入り口から入ろうとしています。ここが決定的な違いです。
「年齢確認」と「禁止」はまったく別のものです
ここが今回いちばん大事な区別です。
年齢確認と聞くと、「結局、何歳未満は使えなくなるんでしょう」と受け取る方が多いと思います。でも違います。
年齢確認とは、何歳かを確認するだけの仕組みです。その先に「禁止」を置くのか、「年齢に合った設定」を置くのかは、まったく別の話なのです。確認さえできていれば、その先は後から設計できます。
そして日本が今向いているのは、後者ではないかと私は見ています。
年齢が分かると、できることが一気に増える
年齢が分かれば、たとえばこうしたことができます。
- 初期設定を非公開アカウントにしておく
- 知らない人からのDMを制限する
- 深夜の通知を止める
- 位置情報の共有を制限する
つまり「使わせない」ではなく、「子どもだと分かったら、子ども向けの安全な設定で使わせる」という方向性です。
これは私がずっとお伝えしてきた、「禁止するよりも、適切に使える力を育てましょう」という考え方と、方向性としては同じものです。
なぜ日本は一律禁止を選ばないのか
理由は2つあると言われています。
理由1: SNSが子どもの居場所になっている
学校に居場所がない子どもが、SNSでつながった人に救われているケースは実際にあります。SNS上に仲のいい人がいる、という子もいます。
そこを一律に閉じてしまうと、人によっては居場所を失うことになりかねません。禁止は、守るための措置であると同時に、奪う措置にもなり得るわけです。
理由2: 禁止すると、もっと危ないサービスに流れる
これはオーストラリアが証明してしまった部分です。
禁止しても、親の顔で認証を通してしまう子が出てきます。また、規制の対象にならなかったサービスや、利用者の少ないアプリに移っていきます。結果として利用率はほぼ元通りになり、しかも隠れて使うようになった分、かえって危ない状態になってしまいました。
日本はこうした結果も踏まえながら議論ができています。これは後から動く側の利点です。先に踏み込んでくれた国のデータが見えるのですから。
ただし、年齢確認にも3つの問題があります
日本のやり方が完璧だとは思っていません。年齢確認にも問題はあります。
1. どうやって確認するのか問題
マイナンバーカードなのか、顔認証なのか、保護者の同意なのか。どれも一長一短です。
フランスはここで揉めて、結果的に年齢確認の規定が法律から削除されました。禁止だけが残って、確認が消えたのです。日本でも同じことが起こる可能性はあります。
2. プライバシーの問題
SNSを使うたびに身分を証明する情報を出すということは、「誰が何を見ているのか」を事業者や国が把握できる状態に近づくということです。ここは必ずぶつかる論点です。
EUは個人情報を渡さずに年齢だけを証明する技術を作ろうとしていますが、これも途中で止まっています。
3. 結局回避される問題
年齢確認があっても、保護者のアカウントで入る子は出てきます。これは避けられません。
だからこそ私は、年齢確認ができれば解決だとは思っていません。年齢確認はあくまで入り口です。その先で大人が関わり続けなければ意味がありません。結局どこまで行っても、大人と子どもがちゃんとコミュニケーションを取れているかが決定的に重要になります。
法律を待たずに、家庭で今日からできること
ここが本題です。
年齢が分かったらできることは、実は法律を待たなくても、今のSNSでできます。保護者が子どもと一緒に設定すればいいのです。
- アカウントを非公開にする
- 知らない人からのDMを受け取らない設定にする
- 夜は通知を切る
- 位置情報の共有相手を絞る
これらは全部、設定画面にあります。
つまり、国が2027年に法律でやろうとしていることの一部は、家庭で設定すれば今日からできるのです。
「禁止か自由か」の2択で考えない
私が保護者向けの講演会でよくお伝えするのは、禁止か自由かの2択で考えないでほしい、ということです。
その間に「設定」があります。
- 使ってもいいけれど、アカウントは非公開にしておこう
- 使ってもいいけれど、夜は通知をオフにしよう
- 使ってもいいけれど、位置情報の共有はやめておこう
この形は、子どもにとって「禁止された」という感覚が薄くなります。一定程度の制限で終わっていれば、隠れてこっそり使おうという方向にも行きにくいのです。
禁止が招く最悪の展開は、使うのをやめることではなく、親に見えないところで使い始めることです。設定という中間地帯は、そこを避けるための現実的な選択肢だと考えています。
「年齢に合った設定」は、子どもだけの話ではありません
最後に視点を変えます。
年齢に合った設定が必要なのは、子どもだけではありません。大人も、自分に合った設定にしたほうがいいのです。
- おすすめ欄ではなくフォロー欄で見る
- 通知を減らす
- 夜は見ない
- 知らない人からのDMを受け取らない
私はSNSで仕事をしている人間なので、「SNSは危ないから使うな」とは言いたくありません。ただ、自分で設定を選ばずにデフォルトのまま使っていると、振り回される可能性は十分にあります。
私自身、SNSの通知は全部オフにしています。全部です。いいねやコメント、DMが届くたびに通知が鳴っていたら、日常生活に支障が出るからです。それくらいでもいいと思っています。
日本がやろうとしているのは、「子どもには子どもに合った設定を」ということなのではないか。だったら大人も、「自分に合った設定を」と考えてみてもいいのではないでしょうか。
まとめ
今回の内容を整理します。
- 日本は禁止ではなく、年齢確認から入っている。2027年の通常国会での法改正を目指す段階
- 年齢確認と禁止は別物。年齢が分かれば、年齢に合った安全な設定ができる
- 一律禁止を避ける理由は2つ。SNSが居場所になっている子がいること、禁止すると隠れて使うようになること
- ただし年齢確認にも、確認方法・プライバシー・回避という3つの問題がある。確認して終わりではなく、その先の大人の関わりが必要
- 非公開設定、DM制限、夜の通知オフ、位置情報の絞り込みは、法律を待たずに今日からできる
規制の話は、どうしても「何歳から禁止されるのか」という一点に関心が集まります。けれど本当に効くのは、禁止のラインをどこに引くかではなく、その子の年齢と状況に合った設定を、大人が一緒に選べているかどうかだと思っています。
まずはご家庭で、お子さんと一緒に設定画面を開いてみてください。そこから始められることは、思っているより多いはずです。
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