正直レビューはなぜ炎上する?「まずい」と伝えるときに守りたい3つのこと

「まずい」と言う自由は、人にあると思います。問題になるのは、料理への評価が場所や国、そこに住む人への言葉にまで広がったときです。この記事を読めば、本音を本音のまま伝えながら、不要な炎上を避けるための具体的な言い方が分かります。

「正直な感想を言っただけで叩かれるのか」
「忖度なしで発信したいのに、どこまで言っていいのか分からない」
発信をしている人ほど、この線引きに悩みます。当たり障りのないことしか言えないなら、発信する意味がないとも感じるはずです。

この記事では、2026年9月に大きな話題になった、海外在住の日本人YouTuberの方をめぐる出来事を題材に、どの言葉で燃えたのかを段階に分けて整理します。線がどこにあるのかが見えると、本音は出しやすくなります。

ポイントは、「まずい」で燃えたのではないという点です。燃えたのは、そのあとに続いた一言でした。一口の料理の話が、3段階で広がってしまったのです。

私は全国の学校・企業・自治体でSNS・デジタルリテラシーの講演を行っています。今回は「言うのをやめましょう」という話ではなく、「言い方を選べば本音は本音のまま届く」という話をします。


目次

何が起きたのか

台湾在住の日本人YouTuberの方(登録者13万人規模)が、8月に台湾の夜市で撮影した動画を公開しました。

屋台で買った料理を一口食べて吐き出し、「マジで美味しくない」「キムチもめっちゃ酸っぱいし、アルコール臭い」と述べ、さらに「ほんま夜市嫌い、なんなら台湾嫌い」と続けました。着ていたTシャツには「私たちは台湾が好き」と書かれていたと報じられています。

そして、屋台の店名と店主の顔が映っていました。

9月20日頃にこれがSNSで拡散されてトレンド入りし、21日に台湾のテレビ局が報道、翌22日には複数の台湾メディアが取り上げました。批判の中心は、現地の料理を酷評しながら台湾で商売をしているという点でした。

さらに、その屋台には星1のレビューが200件ほどついてしまいました。

本人の説明動画

9月23日、本人が1時間以上の説明動画を公開します。サムネイルには、現地の人々の一部を見下すような文言が入っていました。

述べられたのは大きく3点です。サムネイルについては謝罪する。料理の評価は撤回しない、忖度なしの方針は続ける、来年も再来年も炎上するだろう。そして、店に来たことも食べたこともない人が顔も出さずに低評価をつけるのはいじめだ、という批判です。

「まずい」と「嫌い」は別の言葉です

まず立場をはっきりさせておきます。私は、「まずい」と言う自由は人にあると思っています。食べて口に合わなかった、それを正直に言う。それ自体をだめだと言いたくはありません。

そのうえで、今回は言葉を段階に分けて考えたいのです。

第1段階: 「この料理はまずい」

これは個人の味覚の話です。積極的に言えというものではないかもしれませんが、正直なレビューには需要がありますし、言ってもいい範疇だと思います。

私ならもう少し柔らかく言います。「僕はあまり好きじゃないけれど、人によっては好きかもしれません」「味は好みじゃなかったけれど、店の雰囲気はすごくいいですね」。そういう発信ばかりするので大きくバズることはありませんが、それでいいと思っています。

第2段階: 「夜市が嫌い」

これは場所への評価です。夜市という文化ごと、になってしまうので、少し広いと感じます。

第3段階: 「台湾が嫌い」

これは国への評価です。そこに住む2,300万人への言葉になってしまいます。

一口の料理から、3段階で広がってしまいました。しかも「なんなら」というノリの言葉でつながっています。

本人は悪意ある切り取りだと述べていますし、おそらく本当にその場のノリだったのだろうと思います。「まずい」という感情が勢いで「台湾嫌い」まで行ってしまった。友達と話していれば普通にある流れです。公開していなければ、よくある会話でした。

以前の記事で、投稿は自分の文脈ではなく相手の文脈で読まれるという話をしました。まさにそれで、本人の文脈は「一口まずかった」でも、相手の文脈では「あなたは台湾をどう見ているのか」という受け取り方になります。

燃えたのは「まずい」ではなく、その先の一言だった。これが私の見方です。

店名と顔が映っていたことの重さ

もうひとつ大事な点があります。台湾メディアが指摘していたのもここです。

店が特定できる状態で酷評すると、営業に影響が出ます。実際に星1レビューが200件つきました。

友達との会話で「あそこの店、まずかったわ」と言うのは自由だと思います。でも登録者13万人の人が、店の顔を出して強い言葉を使うのは、同じ自由でも重さがまったく違います。

その店で一生懸命やっている人がいて、悪気があったわけでもないかもしれない。何かしらの手違いだった可能性もある。その一言で経営が成り立たなくなる可能性もあります。

私も発信している側なので思うのですが、フォロワーが増えて影響力を持つほど、自分の一言が誰かの生活に影響するという事実を抱えることになります。それを「忖度なし」という言葉で全部片付けるのは、少し違うのではないかとも思うのです。

もちろん、忖度なしで言う人がいないと正しい情報が見えてこない面もあります。ただ、本音を言うことと相手を守ることは両立できるはずです。

店名を伏せる。顔をぼかす。「自分の口には合わなかった」と主語を自分にする。それだけで、本音は本音のまま、届き方が変わります。

「自分はこの味がちょっと苦手だ」で終わっていれば、視聴者が実際に確かめに行って、美味しかったならそれでいい、という話で済みます。強い言葉で断定してしまうと、行ったこともない人までが「まずいんだな」と受け取り、結果としていたずらの低評価まで生まれてしまう。

説明動画で、もっともまずかったのはサムネイル

今回の対応でいちばんもったいなかったのは、説明動画のサムネイルだと思います。

YouTubeをやっている人間として分かるのですが、最後はサムネイルなのです。そこに、現地の人々の一部を見下すような文言を入れてしまった。視聴は取れるでしょう。でも、謝るようなサムネイルをわざわざ付けて出したことになります。

説明するために出した動画のはずが、新しい火種を作ってしまいました。しかも今回は「民度」という、人を下に見る言葉です。国への評価で燃えているときにその言葉を出せば、やはり下に見ているのだと受け取られてしまいます。

ただし、本人の主張にも聞くべき部分があります

店に行ったことも食べたこともない人が、顔も出さずに星1をつけるのはいじめだ、という指摘です。これは正しいと思います。

この方を批判している人が屋台に低評価をつけるのは、完全に筋違いです。屋台は被害者側です。

つまりこの件は、「YouTuberが悪い」では終わりません。批判する側も、矛先を間違えないでほしい。両方が、相手の顔が見えない場所で強い言葉を投げてしまっている状態です。

本音で発信したい人が守るべき3つのこと

1. 評価の主語を自分にする

「まずい」ではなく「僕はあまり好きじゃない」「自分の口には合わなかった」。「台湾が嫌い」ではなく「この味は苦手かもしれない」。

嫌いと苦手では、イメージがかなり変わります。同じ本音でも、主語が自分なら感想になります。主語が店や国になると断定になり、断定は相手に届いたとき攻撃になります。

2. 評価の範囲を広げない

一口の料理の話は、一口の料理の話で終わらせる。「なんなら」で広げない。

夜市、台湾、台湾人。ここまで広げると、国への態度に変わってしまいます。

3. 誰に届くかを、店側の視点で一度考える

自分が屋台をやっていて、登録者13万人の人に顔出しで強い言葉を言われたらどう思うか。それを一度考えてから出す。

言わない、ではありません。言い方を選ぶ。本音は言い方を選べば、そのまま出しても問題ないことが多いのです。

最後に

このチャンネルを否定したいわけではありません。忖度なしのグルメには需要がありますし、それで13万人を集めたのは努力と力があるということです。

ただ、SNSで影響力を持つことは、本音を言う自由と、本音が誰かを傷つける責任をセットで持つことだと思います。片方だけを都合よく持つことはできません。

来年も再来年も炎上するだろう、と本人は述べていたようですが、私は本音のまま炎上しない言い方もあると思っています。それを探すのが、発信する人の仕事なのではないでしょうか。

まとめ

  • 料理への酷評が「なんなら台湾嫌い」まで広がり、現地メディアも報道。屋台に星1が200件ついた
  • 燃えたのは「まずい」ではなく「台湾嫌い」。料理→場所→国と、評価が3段階で広がった
  • 店名と顔が映った状態での酷評は、自由の重さが変わる。届く先に生活している人がいる
  • 説明動画のサムネイルが新たな燃料になった。ただし屋台への星1はいじめだという指摘は正しい
  • 本音で発信するなら、主語を自分にする、範囲を広げない、相手の立場を一度考える

言わないことが正解ではありません。言い方を選ぶことが、発信を長く続けるための技術です。


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