SNSやショート動画がやめられないのは、意思が弱いからではありません。テレビにも本にも映画にもある「終わり」が、SNSのタイムラインとショート動画には存在しないからです。この記事を読めば、やめられない本当の理由と、自分で終わりを作るための4つの方法が分かります。
「気づいたら1時間経っていた」
「やめようと思っているのに、またスクロールしている」
子どもに「スマホばかり見てはいけない」と言っている大人が、寝る前に同じことをしている。自分の意思の弱さのせいだと思って、自分を責めてしまう方が本当に多いのです。
この記事では、ネットで広がっている「ドパガキ」という言葉を入り口に、調査データを見ながら、なぜ「なんとなく」が続いてしまうのかを構造として整理します。原因が意思ではなく設計だと分かると、打つ手が具体的になります。
注目したいのは、この言葉が他人を叩く言葉ではなく、「私はドパ書きだから」という自虐として広まっていることです。つまり多くの人が、もう自分で気づいています。気づいているなら、あとは終わりを作るだけです。
私は全国の学校・企業・自治体でSNS・デジタルリテラシーの講演を行っています。その立場から、「使うのをやめなさい」ではなく「終わりを自分で決める力を育てる」という方向で考えていきます。
「ドパガキ」とは何か
ドパガキは「ドーパミン中毒のガキ」を略したネットスラングで、こういう状態を指しています。
- ドライヤーをかけながら動画を見る
- お風呂で動画配信サービスを流す
- トイレでもSNSをスクロールする
- 寝る前にショート動画を無限に見る
つまり、一瞬の退屈も我慢できず、常に何かしらの刺激を挟んでいないと落ち着かない状態です。
「ガキ」という語がついているので子どもの話に聞こえますが、この4つのうち、大人の方はいくつ当てはまったでしょうか。おそらく2つ以上当てはまる方が多いはずです。
他人を叩く言葉ではなく、自虐として広がっている
2026年9月15日のITmediaの記事でも取り上げられていましたが、この言葉の面白いところは、他人を批判する言葉としてよりも、「私はドパ書きだからさ」という自虐として使われている点です。
私は塾で講師もしているのですが、高校生たちが自分たちで「ドパガキだ」と言っていました。「俺じゃん」という声が集まるわけです。
つまり、みんな自覚しています。刺激がないと落ち着かない自分には気づいている。でもやめられない。
調査データが示す「面白いから見ているのではない」という事実
同記事で紹介されている2026年5月の調査(962人対象)では、SNSのストレスについて「非常に悩んでいる」が12.8%、「ある程度悩んでいる」が44.8%、合計で約57%でした。
そしてスマホを長時間見てしまう理由の1位は、「ついつい長時間見てしまう」で31.9%。理由を聞かれて「ついつい」と答えている、という状態です。答えになっていないようですが、これがリアルなのだと思います。
SNSを使っているときの状態としては、「なんとなく続く」が23.7%、「時間の経過を認識できない」が22.2%。
ここを見てほしいのです。面白いから見ているのではありません。ついつい、なんとなく、気づいたら、目的がないまま続いている。これが実態です。
なぜ「なんとなく」が続くのか
理由はシンプルです。
ショート動画やSNSは、脳の報酬系を刺激するように設計されています。次に何が出てくるか分からない状態でスワイプすると、ドーパミンが出る。これはギャンブルと同じ構造です。
さらに厄介なのがアルゴリズムです。あなたが何に反応するかを学習し、次はもっと反応するものを出してきます。見れば見るほど精度が上がっていきます。
以前アルゴリズムについて書いたときにもお伝えしましたが、世界中の優秀な人たちが「どうやったら次の1本を見せられるか」を毎日研究しています。それに個人が根性で勝てるわけがありません。
だから「やめられない自分は意思が弱い」と思っている人に言いたいのです。それは意思の問題ではありません。
本当の問題は「終わりが設計されていない」こと
テレビ番組には終わりがあります。本には最後のページがあります。映画にはエンドロールがあります。40分の動画を見終われば「見終わったな」という区切りがあります。全部、最初から終了が組み込まれています。
でもSNSのタイムラインとショート動画には、終わりがありません。スクロールすれば次が出る。永遠に出ます。
つまり、終わりを決める役目が全部こちら側に投げられている。やめられないのではなく、終わりがない場所で「終わりを自分で決めろ」と言われている状態です。それは難しいに決まっています。
これは子どもだけの現象ではありません
「ドパ書き」という言葉の広がりを見て、「最近の若い子は」と思った大人もいると思います。
でも、これは子どもだけの現象ではありません。世界全体がこの仕様に適応させられています。
大人も電車でスクロールしています。会議の合間にスマホを見ています。子どもに「スマホばかり見て」と注意しておいて、自分は寝る前にSNSを見ています。昼休憩に動画を流しながら食事をし、エレベーターの待ち時間にも画面を見ている。
保護者向けの講演会では、「子どもがスマホを手放さない」という悩みを本当によく聞きます。けれど、子どもが使っているアプリと大人が使っているアプリは、同じ設計です。大人も同じ構造の中にいます。
だから「Z世代は」「最近の若者は」と言う資格は、正直なところ誰にもありません。まずは大人の側も、自分も終わりを決められていないと認めるところから始めてほしいのです。
終わりを自分で設計する4つの方法
1. 時間ではなく「本数」で終わりを決める
「30分まで」と決めても、30分経ったことに気づきません。調査でも「時間の経過を認識できない」が約22%いました。SNSの中では時間の感覚が消えるのです。
だから時間ではなく、「あと10本見たら終わろう」と決める。本数なら数えられます。あと5本、あと3回スワイプしたら閉じる、と決めてしまう。
「なんとなく」を「意識」に変えるのがポイントです。
2. 隙間に刺激を入れる習慣を、1つだけ外す
ドライヤー、お風呂、トイレ、寝る前。この4つを全部やめようとしなくていいです。1つだけでいい。
私も昔は全部スマホを見ていました。今は、ドライヤーとお風呂は外せています。ジムの温泉を使うようになって、脱衣室ではスマホを見られない環境になったからです。お手洗いにも、最近は持っていっていません。寝る前は、ギリギリまで仕事をしてしまうので微妙です。
おすすめはお手洗いです。時間がいちばん短いので、始めやすい。スマホを持っていかない、それだけです。この1つができるだけでも大きいと思います。
3. 「おすすめ」を切る
終わりがないのは、レコメンド機能のせいです。
フォロー中の人の投稿を時間順で見る設定にすると、終わるタイミングが来ます。全部見たら、終わりです。
終わりの設計がないなら、終わりがある設定に変えればいい。これは根性ではなく設定で変えられる問題なので、ぜひ試してみてください。
4. 退屈を悪いものだと思わない
これがいちばん大事です。
常に刺激を挟んでいる人は、要するに退屈が怖いのです。何もない時間に耐えられない。
でも私は、何もない時間にこそ価値があると思っています。アイデアはシャワー中や散歩中に出てくる、とよく言われます。あれは何もしていないから、脳が勝手に考え始めるのです。
スクロールしているとき、脳は考える暇がありません。退屈とは、脳が自分で考え始める時間です。それを全部他人が作った刺激で埋めてしまったら、自分で考える時間がゼロになります。
私は毎日ランニングをしていますが、その時間は画面を見ない時間です。音楽は聞きますが、ショート動画のように次々と刺激が来るものではありません。
「禁止」ではなく「終わりを決める力」を育てる
最後に私の立場を書いておきます。
私はSNSのおかげで、自分のやりたいことに挑戦でき、仕事を作れるようになった人間です。だからSNSが悪い、と断言したくはありません。ショート動画にも、面白いものや勉強になるものがあります。
「この動画を見たい」と思って見ているなら、それはうまく使えている状態です。でも「気づいたら1時間経っていた」は、SNSに使われている状態だと思います。
「ドパガキ」という言葉が自虐として広がっているのは、みんな薄々、使われている自分に気づいているからでしょう。気づいているなら、あとは終わりを自分で作るだけです。
SNS教育の場では、私は「禁止」は勧めていません。禁止しても、いつか持ち始める時期が来ます。そのときに何の備えもなければ、結局同じところに沼るだけです。
禁止ではなく、使いこなせる力を育てる。今日お伝えした4つは、大人も子どもも一緒に取り組めるものです。
まとめ
- 「ドパガキ」はドーパミン中毒を自虐的に表す言葉として広がっている。大人にも当てはまる
- 約57%がSNSのストレスに悩み、長時間見る理由の1位は「ついつい」。面白いからではなく、なんとなく続いている
- やめられないのは意思の問題ではない。終わりの設計がない場所で、終わりを自分で決めろと言われているから
- 子どもだけの話ではなく、大人も同じ構造の中にいる
- 対策は4つ。時間ではなく本数で区切る。隙間の刺激を1つ外す。おすすめをフォロー中に変える。退屈を悪いものだと思わない
やめられない自分を責める必要はありません。責めるより、終わりを1つ作るほうが早く効きます。
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