ある調査で、中学生の52.5%が「自分はスマホ中毒だと思う」と回答しました。この記事では、その調査結果から見えてくる子どもたちの本音と、フランスの学校でのスマホ禁止、Metaによる18歳未満の利用制限といった世界の動きを整理したうえで、「禁止」と「教育」のどちらが子どもを守るのかを考えます。
「うちの子はスマホばかり見ている」
「注意しても『分かってる』と言うだけで変わらない」
「持たせないと友達関係から外れそうで、取り上げるのも怖い」
保護者の方から、こうした声をよく聞きます。
この記事では、子どもたちが「なぜスマホを手放せないのか」を自分の言葉で語った調査結果をもとに、「スマホばかり見てないで勉強しなさい」が効かない理由と、家庭や学校で今日からできる具体的な工夫までを解説します。
大人が「最近の子どもはスマホばかり」と心配する以前に、子ども自身がすでに「自分は使いすぎている」と自覚している。この事実を知ると、子どもへの声かけの前提がまるで変わります。
私は全国の学校・企業でSNS・デジタルリテラシーの講演を行っている立場から、また塾講師として日々学生と話している立場から、このテーマを「禁止か自由か」の二択ではない形で考えていきたいと思います。
中学生の52.5%が「自分はスマホ中毒」と答えた調査とは
今回の調査は、ニフティが運営する小中学生向けサイト「ニフティキッズ」の利用者1,949人を対象に行われたスマートフォンに関するアンケートです。
その結果、自分専用のスマートフォンを持っている人の割合は、小学生で39.7%、中学生で75.9%でした。そして、回答した中学生の52.5%が「自分はスマホ中毒だと思う」と回答しています。
スマホ中毒だと最も感じやすい瞬間として挙がったのは、「気づいたら1時間以上触っていたとき」です。ほかにも、宿題を後回しにしてしまったり、何かをしながらスマホを見てしまったりしている、という回答が出てきています。
もちろん、この調査はニフティキッズを訪れた人を対象にしたインターネット調査なので、日本の中学生全体を完全に代表しているわけではありません。それでも、1,900人以上の回答で、中学生の半数以上が自分の使い方に問題意識を持っているというのは、非常に重要な結果だと思います。
子どもたちは「なぜ手放せないのか」まで分かっている
調査に寄せられた子どもたちの声を見ていると、さらに興味深いことが分かります。
「YouTubeやSNSでは、自分の好みに合った動画が永遠に流れてくる」
「LINEにはすぐに返信をしなきゃいけない気がする」
「スマホが、いつでも現実逃避できる心の保険になっている」
子どもたちは、自分がなぜスマホを手放せないのかというところまで理解し始めています。単にゲームをやりたい、動画を見たいというだけではなく、友達との関係から外されたくない、つらい現実から少し逃げたい、一人でいる不安を埋めたい。こうした気持ちが、スマホの向こう側にあるのです。
だから、大人が「スマホばかり見てないで勉強しなさい」と言うだけでは解決しません。それで「分かった」と言って勉強できるほど、単純な話ではないのです。子どもはスマホの危険性を知らないから使っているのではなく、分かっているけれどやめられなくなっている。ここが出発点です。
「持たせない」ことにも不安がある。友人関係と居場所の問題
同じ調査では、自分専用のスマートフォンを持っていない小中学生の89.8%が、「スマートフォンを欲しいと思ったことがある」と答えています。理由としては、「友達とLINEがしたい」「外出先で連絡を取りたい」「分からないことを調べたい」といったものでした。
友達がみんなLINEで連絡を取り合っているのに、自分だけLINEを持っていない。これは、仲間外れになったような気分になってしまいます。中には、クラスのみんながLINEをしていて自分だけ話題についていけず、仲間外れにされるのではないかという不安を答えている子もいます。
つまり、子どもたちにとってスマホは、昔で言う漫画やゲームのような「ただの娯楽」ではなく、友人関係や学校での居場所に関わる道具になっているのです。持たせれば使いすぎるかもしれない。しかし持たせなければ、友人関係から外れる不安がある。これは保護者にとっても、簡単に正解を出せる問題ではありません。
世界は「本人任せ」から「仕組みで制限する」段階に進んでいる
世界中で今、子どもにスマホをどう使わせるかという議論が進んでいます。そして、本人の自制に任せる段階から、学校やプラットフォームの仕組みで制限しようという段階に進んできています。
フランスは高校でもスマホ禁止の方向へ
フランスでは、小学校と、11歳から15歳が通う学校でスマートフォンの使用が禁止されています。さらに2026年7月には、高校でのスマートフォン使用を禁止する法案が議会で可決されました。マクロン大統領は法律を公布することを決め、政府は9月の新学期から開始する方針を示しています。
実際に適用するには各学校が校則を変更する必要もあり、学校関係者からは「準備期間が足りない」という懸念も出ています。すべての高校で一斉に問題なく始まるとまでは言えませんが、方向性としては、子ども自身に使い方を考えさせる教育だけでなく、学校では物理的に使えない環境を作るほうへ進んでいます。
Metaは18歳未満の利用を「1日2時間」に制限
アメリカでは、さらに大きな動きがありました。InstagramとFacebookを運営するMetaが、10代のSNS利用をめぐる訴訟で、米国の州当局などと和解したのです。「子どもが中毒になったのは、この会社が依存させる構造を作っているからだ」という趣旨で訴えられていた訴訟です。
和解の対象となる地域では、18歳未満の利用時間がInstagramとFacebookを合わせて原則1日2時間に制限されます。解除には保護者の許可が必要です。さらに、午前0時から6時まではフィードやリールの閲覧・投稿がブロックされ、午前8時から午後3時までは通知を止める「学校モード」になるとのことです。
ほかにも、いいね数を標準で非表示にする、自動再生をオフにできる、パーソナライズされていないフィードを選べる、連続利用中に休憩を促す、といった対策を導入する話になっています。いいね数の非表示は、「自分はいいねが少ないからダメなんだ」という他人との比較を防ぐ意味があるのでしょう。日本のSNSでも、stand.fmのようにそもそもフォロワー数を表示させない設計のサービスがあります。
重要なのは、これが本人の自制心だけに頼った対策ではないということです。「やめようと思えばやめられる設計」ではなく、「使い続けにくい設計」に少しずつ変えている。プラットフォーム側も、そういう動きを取り始めています。
日本の子どもは「企業が守ってくれる」わけではない
一方で、今回の和解に基づく保護策は、現時点では米国の利用者に限定されると報じられています。同じInstagramを使っていても、住んでいる国によって保護の仕組みが変わってくるということです。アメリカの子どもには1日2時間の制限があっても、日本の子どもに同じ制限が自動的に適用されるわけではありません。
ここには、安全対策の格差があります。日本ではまだ議論も進んでいないので、家庭や学校がより大きな役割を持つことになります。「企業が守ってくれるだろう」ではないのです。
禁止だけでは解決しない理由
では、日本もフランスのように学校でスマートフォンを禁止すればいいのでしょうか。
私は、学校で一定の制限を設けることには意味があると思います。「持ってきてもいいけれど、登下校中以外は使わない」というルールは、実際に多くの高校にあるでしょう。授業中に通知が来る、休み時間もみんな画面を見ている、誰かが無断で写真を撮ってSNSに投稿する。こうした問題は、物理的に使えない環境にすれば減らせます。
しかし、禁止だけですべてを解決できる話でもありません。学校で禁止されていても、家に帰れば使えます。大人の目がないところなら隠れて使えます。
なぜ使いすぎると問題なのか。SNSで何が起きているのか。自分の感情や時間をどう管理するのか。ここをちゃんと学んでおかなければ、学校で禁止しても家では使い放題ですし、学校を卒業した瞬間に自分を守ることができなくなってしまいます。
「禁止か自由か」ではなく、グラデーションのある制限と対話を
この問題は、「禁止するべきか」「自由に使わせるべきか」の二択ではありません。
自制がまだ難しい学年や年齢はあるでしょうから、一定の制限は必要だと思います。ただし、「18歳未満は一律ダメ」ではなく、年齢や状況に応じてグラデーションをつけた制限が必要です。それと同時に、自分で使い方を考える教育を絶対に後回しにしてはいけません。
家庭でできる仕組みづくりとしては、たとえば次のようなものがあります。
・寝室にはスマートフォンを持ち込まない
・食事中は家族みんなが使わない
・利用時間は子どもと一緒に確認する
・一方的に没収する前に、使っている理由を聞いてみる
・友人関係で困っていないか確認してみる
そしてもう一つ、家庭で重要なのは、大人だけが「正しい側」に立たないことです。
大人が口を揃えて「子どもはSNSを使わないほうがいい」「スマホ規制に賛成」「中毒になったら危ない」と言いますが、あなたたち自身はどうですか、という話です。大人もスマートフォンを手放せていません。保護者が食事中にSNSを見ておきながら、子どもに向かって「スマホばかり見てないで勉強しなさい」と注意しても、説得力がないでしょう。子どもを変えたいなら、まずは大人も一緒に使い方を見直す。私はずっとこの話をしてきています。
まとめ:「意志が弱い」と叱るより、使い続けにくい環境を一緒に作る
中学生の52.5%が、自分がスマホ中毒だということを理解しています。子どもたちはスマートフォンの問題に気づいていないわけではありません。気づいています。早く寝なきゃと思っているし、やめたいと思うこともある。でも、友人関係や不安、現実逃避、終わりなく表示されるおすすめ動画によって、なかなか手放せなくなっているのです。
私も塾講師として学生と話していますが、「ついついショート動画を見てしまって睡眠不足」という子は本当によく見かけます。
だから必要なのは、「意志が弱い」と叱ることではありません。仕組み上、見てしまうようにできているのです。「意志が弱い」「勉強しろ」と叱るよりも、使い続けにくい環境を一緒に考えていくこと。たとえば、勉強するときはスマホをリビングに置いて自分は勉強部屋で勉強する、スマホの充電は家のリビングだけでする。こうしたちょっとした工夫を積み重ねていけるといいと思います。
没収のような極端なことをするのではなく、あくまで強弱をつけた対策を、大人がまず一緒に考える。押し付けるのではなく、横で伴走するようなイメージです。そして何よりも、子どもたちがスマートフォンで何をしたいのかを考えること。場合によっては、親子で適切に会話をしていくことがポイントになります。
規制だけでも足りませんし、教育だけでも足りない部分があります。だからこそ、仕組みを作りつつ、大人と子どもの対話も重ねていく中で、子どもがちゃんと自分の意志で自分を守れるようにしていく。これが、これからのSNS教育・スマートフォン教育に必要なことだと私は考えています。
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